ホームインスペクションの目的

先月下旬から行っていたインターネットの住宅関連サイトに掲載するための記事の執筆が昨日でようやく終了しました。
6,000~8,000文字の記事を20記事ほど作成しました。
ライティングの仕事は、3年前に知人に紹介されて副業として始めたものですが、今では収入の柱のひとつになっています。
何よりも自分の作成した記事を、住宅の購入やリフォームの際に多くの人に役立てていただければ・・・と思っています。

さて、ホームインスペクションを依頼する方にとってホームインスペクターは住宅診断のプロなので、建物の隠れた部分に欠陥はないか、耐震性に問題はないか、建築基準法に違反していないか、設計図面通りに施工されているか・・・などを判定してもらえると思っている方が少なくないでしょう。

しかし、特に住宅購入前のインスペクションは限られた時間の中で、目視を中心に「非破壊」で行うものなので、欠陥が見つからなくても100%安心とはいえないのが実情です。
また、建築基準関係法令等への適法性を判定したり、設計図面との照合を行ったりするものではないこともあらかじめ知っておく必要があります。

一方、住宅を購入しようとする方が最も不安に思うのが、「欠陥住宅だったらどうしよう・・・」ということなのではないでしょうか。
一般的に住宅の不具合には、「欠陥」と「劣化」があります。
「欠陥」は主に設計や施工上の不備から発生するものなのに対し、「劣化」は時間の経過とともにどんな家にも発生します。
したがって新築や築浅の住宅の場合は欠陥の有無を調べることがメインになりますが、中古住宅では主に劣化の度合いを判定し、建物のコンディションを診断することになります。
そして専門家にとって「劣化」は比較的見つけやすいものですが、「欠陥」を見つけるのは簡単なことではありません。

しかし、築後10年以上経過した物件であれば、雨漏りや不同沈下などの重大な欠陥がある可能性は低いと思って良いと思います。
実際にホームインスペクションを行っていて、築10年以上の物件では施工不良や施工不備などの軽微な欠陥はあったとしても、重大な欠陥が新たに見つかったケースはほとんどありません。
重大な欠陥については、すでに修理されていたケースがほとんどでした。

ところが「欠陥」と「劣化」の線引きは非常に難しく、一見「経年劣化」だと思われることが実は構造的な「欠陥」だったり、設計や施工の「欠陥」が原因で「経年劣化」が早まったりすることが少なくありません。
モルタル外壁のひび割れやタイルの浮き、シーリングの剥がれなどは通常では経年劣化によるものと判定されるケースが多いのですが、中には施工不良や雨漏りなどの欠陥が原因で発生することがあります。
普通よりも早く劣化事象が現れる場合には注意が必要でしょう。
いずれにしても建物が既に完成している状態で、欠陥住宅を事前に見破るのはプロでも簡単なことではありません。

では費用を支払って、専門家にインスペクションを依頼する必要はあるのでしょうか?

ホームインスペクションを行うことの最大のメリットとは?

これから住宅を建てたり購入したりしようとしている方の中には、「わざわざ費用を支払ってまでホームインスペクションを行っても意味がない」と思っている方が多いのではないでしょうか。

インスペクションの目的が「欠陥を見つけること」であれば、新築注文住宅の場合なら建築設計事務所に工事中の設計監理を依頼したり、第三者の専門家に施工中に検査を依頼したりして、「欠陥」を未然に防ぐ方がより効果的です。
(ただし費用は高額になります)
そして購入しようとしている住宅が中古住宅や完成済みの建売住宅の場合には、残念ながら欠陥住宅を完全に見破る方法はないと思った方が良いでしょう。

インスペクションの目的は、建物の「欠陥を見つけること」ではありません。
もちろん調査の過程で欠陥が見つかることも少なくないのですが、最大の目的は「資産価値の高い建物かどうかを判定する」といっても過言ではありません。
少なくとも弊社では、そういったことを踏まえて依頼者に報告させていただいています。

というのも、中古住宅の場合には経年劣化が発生しているのが当たり前だからです。
したがって購入後にどの様に対処するのかが重要なのです。
必要以上に依頼者の不安を煽るのは、良いインスペクターとはいえません。
また万が一、雨漏りやシロアリの食害などが発見されたとしても、被害の程度によっては購入する価値のある物件もあります。
例えば雨漏りの原因が明らかで、構造躯体の損傷がほとんどなく少額で修繕が可能であれば、購入してもほとんど問題はありません。
大切なことは事前に不具合箇所や修繕費用を把握した上で、購入の判断をすることなのです。
しかしこれが一般の方には非常に難しいため、専門家のアドバイスが重要になると思います。

また築30年以上でも構造躯体がしっかりとしている物件であれば、たとえ外壁の経年劣化が酷くても、価格次第ではリノベーションを前提に購入することも選択肢のひとつになるでしょう。
外壁の貼り換えと同時に、耐震補強と断熱改修を行って、安心して快適に暮らせる様にすることもできます。
この様に経年劣化があっても、適切な修繕やリノベーションを行うことで資産価値を高めることが可能です。

ホームインスペクションを行うことの最大のメリットは、建物のコンディションを正確に把握して、専門家による修繕やメンテナンス、リフォームのアドバイスが受けられることだといっても良いでしょう。
世の中から欠陥住宅がなくなれば、第三者による建物検査は必要なくなりますが、ホームインスペクションは不可欠です。
したがってホームインスペクションを依頼する際には、単に建物のコンディションを調べて報告するだけでなく、修繕やリフォームの適切なアドバイスが受けられるインスペクターに依頼することが大切です。

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外壁の経年劣化は酷くても、構造躯体がしっかりとしていれば購入しても大丈夫。

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