住宅業界の特異性を知る

長年住宅建築に携わってきて常に感じるのは、住宅業界は他の製造業と比較して非常にミスが多い業界だという事。
どんな会社でも、1軒の住宅が完成するまでにミスが全くない事などほとんどないのが実情でしょう。

住宅現場では施工ミスばかりでなく、図面作成上のミス、打ち合わせ内容の漏れ、職人への伝達漏れなど様々なミスが発生しています。
建築主からすれば、「どうして事前にチェックできないのか?」と疑問に思うケースも多いでしょう。
私も住宅会社に勤務していた当時には、施主様から何度かお叱りを受けた経験があります。
確かに図面上のミスなどは、もう少し注意していたら未然に防げたと思えるものも少なくありませんでした。
私の経験上、この様な指摘は製造業のエンジニアやIT系の仕事に携わっている人から多かった様に思います。

確かに作業工程ごとに厳格なチェックを行えば、このようなミスを大幅に削減する事が可能になるでしょう。
しかし住宅の建築は、賃貸住宅や一部の規格型の住宅を除いてほとんどが一品生産です。
数百棟建築しても、間取りや使用する材料の違いだけでなく、敷地形状や方位、道路付け、関係する建築法規、建築主の意向など同じものはひとつとしてありません。
中には打ち合わせを行った当事者以外の第三者では、チェックできないものもあります。
また1軒の住宅が完成するまでには非常に多くの人が関わり、現場ごとに変わる事も多いので、関係者のコミュニケーションも欠かせません。
ひとつ(少数)の図面や見本などを厳密にチェックすれば、おおかたのミスが防止できる大量生産の商品とは事情が大きく異なります。
そして住宅を一品大量生産の商品と同じように一棟ずつ厳格にチェックしようとすると、建築コストや工期に大きな影響を与えてしまうのです。

また万一不具合が生じた場合のフィードバックや各種のチェックリストも、すべての住宅に当てはまるわけではありません。
そして一つの改善が多くの再発防止につながる事も少ないのです。
失敗事例を教訓にしてチェックリストを作成しても、他の現場では役に立たないケースもたくさんあります。

住宅会社にはミスした場合の対応力が必要!

この様に同じ「ものづくり」の仕事でも、住宅産業はちょっと特異な業界といえます。
ミスは避けなければならないものですが、これから住宅を建てようと思う方はこの様な事情をあらかじめ知っておく事で、トラブル防止の対策を立てる上で役立つと思います。
たとえどんな会社に依頼しても、決して「任せておけば安心」ではないのです。

住宅を建てる際には、大小にかかわらず何らかのミスに遭遇する確率は高いといえます。
住宅会社を選ぶ際には、万一の場合のリカバリー対応力も考慮する必要があります。
そして第三者の専門家に、契約内容や設計図書の事前チェックを依頼するのもミスを防止するための有効な手段です。

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