東京都の既存戸建住宅流通活性化対策

東京都は、既存戸建住宅の流通を後押しするために、既存住宅をリフォームし、モデルハウスとして公開する事業者の募集を5月30日から12月20日までの期間で行っています。

1981年6月以降に都内で建築された木造戸建住宅(新耐震基準の住宅)が対象で、リフォーム工事前に応募し、建物状況調査を実施して既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に合格すれば、モデルハウスの運営費用として1か月あたり最大100万円の補助金を支給するという大盤振る舞いです。

この背景として、都内における2018年度の既存住宅売買の成約件数がマンションで約19,000戸を上回ったのに対し、戸建住宅は4,000戸に満たなかったことがあります。

空き家の増加により、既存住宅の流通活性化が求められる中、中古マンション売買の成約件数は増加傾向にあるものの、戸建住宅はほぼ横ばいなのは、東京都だけでなく首都圏全体にもいえると思います。

中古戸建住宅の流通が活性化しないのは何故?

なぜ中古戸建住宅の売買成約件数が伸びないのでしょうか?
中古戸建住宅の流通が活性化しない原因は、戸建住宅はマンションと異なり定期的に修繕が行われているケースが少ないため、築年数の経過にともなう経年劣化が顕著に表れていて、信頼性が非常に乏しい点があります。
売買価格は、ほぼ立地と築年数だけで決まってしまうので、同じ築年数でも建物のコンディションは物件によって大きく異なります。
また住宅診断を行ったとしても、不具合部分を修繕して建物を健全な状態に戻すためには多額な費用がかかってしまうと診断されるケースも少なくありません。

さらに戸建住宅のリフォーム・修繕には、一般的にマンションリフォームよりも高い技術力や建築知識が必要とされるため、対応できるプレーヤー(リフォーム業者)が不足していることも原因になっていると思われます。
実際にリフォーム業者の施工不良によるトラブルも数多く発生しています。

近年になって少しずつ住宅を長持ちさせるためのメンテナンスに関心を持つ人が増えてきましたが、高度経済成長の裏で形成された日本人の住宅に対する「スクラップ&ビルド」の考え方がそう簡単に変わるものではありません。

環境問題や景気の低迷、少子高齢化、空き家率の増加などからストック社会への転換が望まれている中、「いいものをきちんと手入れして長く大切に使う」ことに少しでも貢献していきたいと思います。

まずは「住宅のメンテナンス」と「ホームインスペクション」の啓蒙活動が大切です。

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