不安を煽るインスペクション

中古住宅の購入を検討している方がホームインスペクションを依頼する理由のほとんどが、「構造的な欠陥や雨漏りなどの大きな不具合はないか?」「隠れて見えない欠陥はないか?」「購入して安心な建物なのかどうか?」という疑問を解消するためです。

そのため、日常生活においては高額とも思える費用を払って専門家に調査を依頼します。
それだけに依頼を受けたホームインスペクターの責任は重要で、見落としがない様に細心の注意を払って住宅診断を行うと共に、依頼者への報告の仕方が重要になります。

先日相談を受けた事例ですが、非常に気に入った物件があったので契約前にある住宅診断会社にホームインスペクションを依頼したところ、天井に大きな染みがあって雨漏りと診断されたために購入をあきらめたという事でした。
その時の報告書を見せてもらったところ、ちょうど天井に染みが発生している部分の天井裏を撮影した写真があり、その写真を見る限りでは天井の裏側や上部の小屋組に染みや傷んでいる箇所はなく、雨漏りとは断定できない様に思いました。
また報告書にも雨漏りと断定した理由は一切書かれていませんでした。
写真を見るだけでは染みの原因まではわかりませんでしたが、安易に「雨漏り」や「水漏れ」と断定してしまっては依頼者の不安を煽るだけになってしまいます。

一次診断であって非破壊で行うホームインスペクションでは、不具合の有無はわかってもその原因までは特定できない場合もあります。
原因がわからないものまで無理に断定して依頼者に報告すると、依頼者が誤った判断をしてしまうことにもなりかねません。

また以前に相談を受けたケースとしては、築30年の物件を購入しようとした方の事例があります。
築年数の割に非常に手入れが行き届いていてとても綺麗な物件だったために、一目で気に入って念のために契約前にホームインスペクションを依頼したところ、床下に断熱材がないことを指摘され、欠陥住宅だと思って購入をあきらめたという事例でした。

しかし住宅において初めて省エネ基準が制定されたのは1980年のことで、1980年代以降徐々に断熱材が入れられる様になったものの義務化はされていないので、この時代の住宅の床下に断熱施工がされていないのは一般的なことでした。
さらに床下の高さが十分にあれば、後から断熱材を設置することも比較的容易です。
こうした説明をきちんと行わずにただ事実を報告しただけでは、依頼者の不安を煽るだけになってしまいます。

意図的に不安を煽る診断結果を報告する住宅診断会社もある!

中古住宅購入前にホームインスペクションを依頼する方は、少なからず購入しようとする住宅に対して不安を抱いています。
こうした不安を逆手にとって住宅診断を悪用する業者も存在しています。
依頼者の不安を煽る診断結果を報告して購入を断念させ、別の物件を紹介するという不動産会社の関連企業もあります。

ホームインスペクターが行う診断結果の報告は、依頼者の購入判断を左右する重大なものです。
報告内容が意図的なものなのか、説明不足なのか、単にホームインスペクターの知識不足や見落としなのかの判断は難しいところですが、不動産会社やリフォーム会社と利害関係のある住宅診断会社に依頼する際には注意が必要です。

この様な会社は比較的割安な価格でホームインスペクションを請け負っているケースが多いと思いますが、多少価格が高くても中立的な立場の住宅診断会社に依頼することをオススメします。

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