マンション専有部分の給排水工事

マンションのリノベーションが人気です。
マンションは管理がしっかりしていれば、戸建と比べて品質が安定しているので、大がかりな改修工事を行って永住しようとする方が多い様です。
一方、マンションには、区分所有者が自由にリフォーム可能な専有部分と、自由にリフォームができない共用部分があります。
そして、専有部分と共用部分の扱いはマンションごとに若干異なる事が時々問題になります。
特に給排水管の取り扱いについては十分な配慮が必要です。

マンションの給排水管に漏水が起こると、下階の住戸に甚大な被害が生じます。
マンションの給排水管は、専有部分の床下や壁の中に配管されていたり、専有部内の区画されたパイプスペース(共用部)の中にあったりします。
また古いマンションになると、上階の部屋の給排水管が下階の天井裏に設置されている事もあり、漏水の際には責任の所在をめぐってトラブルになる事も多い様です。

マンション標準管理規約では、共用部分の管理については、「管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする」となっていますが、専有部分の給排水管が共用部分の給排水管と構造上一体となっている場合もあるので、その線引きははっきりしません。

一般的には専有部分配管は各区分所有者がそれぞれ工事を行い、共用部分の配管は大規模修繕などで管理組合が行いますが、共用部の排水立管などが専有部分にある場合には、室内に立ち入り専有部の壁や天井を壊しての工事が必要になります。
また、専有部分の間取りによっては、キッチンや便器等の住宅設備機器の一時撤去が必要になる場合もあります。

そして、一番の問題が、専有部分の配管のメンテナンス状況が部屋ごとに異なる事でしょう。
基本的には専有部分の配管も、共用部分と同じ管材が使われ、同じ経年なので、劣化具合もほぼ同等と考えられます。
専有部の配管が全くメンテナンスされずに放置されている部屋があるのは、好ましくありません。
また、戸別にリフォームされていたとしても、配管の更新部位や管材の種類、施工精度なども工事業者によって様々です。
特に、専有部分の新設配管と共用管との接続部分の不具合や、防火区画の配管貫通部の不適切な施工をよく目にします。

マンション給排水工事業者に求められる事

この様に専有部分のリフォーム工事が、漏水や排水不良等の機能障害、火災発生時の延焼の危険性など、マンション全体に大きな悪影響を及ぼす可能性は比較的高いと思います。
漏水や排水不良のほかにも、キッチンの位置を大幅に移動したことによるウォーターハンマーの発生など、隣接する住戸に影響を及ぼす事例もあります。
近年は、リフォーム工事でも架橋ポリエチレン管が採用されているので、給水・給湯管の継ぎ手部分からの水漏れはほとんどなくなりましたが、排水管の施工不良による漏水事故は時々発生しています。

本来であれば、給排水管の施工に関しては専有部分についても、管理組合の管理下で進めるのが理想ですが、あまり現実的ではありません。
マンションでは、専有部分の工事は区分所有者各戸任せにせざるを得ないのが現状なので、専有部給排水工事の現場管理者には、適正な施工を指導・監督できるスキルと責任を持った人が求められます。
特にマンションリフォームは、構造躯体に手を加えない、建築確認申請が不要などの理由から、安易に参入する業者が後を絶たず、建築のスキルが低い業者が散見しているので、要注意です。

最近人気の高いリノベーションですが、リノベとは本来、新築時よりも住宅の性能や価値を向上させるためのものです。
いい加減な配管工事では、新築時よりも機能が劣ってしまいます。
マンションの給排水工事には常に大きなリスクが伴うことをよく理解した上で、信頼できる業者に依頼して欲しいと思います。

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給排水工事では、排水管の口径や勾配、給排水管の継ぎ手や接続部、配管の固定等、工事中に十分なチェックを行う。
また、躯体のハツリや振動を最小限にとどめる工法の採用や施工の工夫を行う事が必要。

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