住宅の建築コストの実情と価格交渉

誰もが安くて高品質な家を建てたいと思っています。そのために数社から相見積もりを取り、プラン作成を依頼してあれこれ比較検討し、価格交渉をします。

しかし必ずしも建築コストの内訳を理解して価格交渉している訳ではないはずです。

建築コストの内訳を知る事で交渉するポイントが見えてくると思います。

建築コストの実情と価格交渉のポイント

reformprice

家を建てるための見積書は人件費と材料費と諸経費から構成されています。

一般的に諸経費は工事費の10%前後(リフォームでは10~15%)となっている事が多く、お客様が最初に値引き交渉のターゲットにするのはだいたいこの部分です。

諸経費は住宅会社の社員の人件費や広告宣伝等の営業活動費、現場の保険や税金など会社を維持・運営するための必要経費になります。またここには商品開発費用やアフターサービス費用、住宅会社の事務所、モデルルーム、ショールーム等の維持管理費用等も含まれています。

会社によって違いがあるのは、営業効率の差(成約率の差)や広告宣伝などの間接経費のかけ方、利益率の設定の違い等によるのですが、住宅会社にとっての必要経費なので比較検討の材料にはなっても値引き交渉のターゲットとしてはお奨めできません。仮にここで値引きできたとしても必ずどこかの工事項目でコストカットされます。

残るのは人件費と材料費となるのですが、住宅の場合その比率はおおむね6 対4 程度だと思います。人件費の方が多いのです。テレビ番組等で紹介される様に、DIY で家を建てたりリフォームすると驚くほど安い値段でできるのは人件費がかからない為です。

全く同じ仕様の見積もりで材料費が異なるのは、仕入れルートの違いや仕入れ価格の違い、市場価格の変動(いつ仕入れるかの違い)、商品在庫の有無等が原因です。また住宅会社によって主要取引メーカーが異なるので、ほとんど同じ仕様、グレードの商品でもメーカーを変更すれば安くなる事もあるので、検討する価値はあります。

しかし建物の構造上支障がなく完成後には見えなくなってしまうからといって、下地材の木材を安価なものに変更する事はあまりお奨めできません。安価なものは含水率が高く、あとあと反りや狂いが出る可能性があります。無理な値引きを要求すると知らないうちにこの様な部分でコストカットされてしまう可能性があるので注意が必要です。

最後に人件費です。人件費は住宅の建築コストの中で最も多くの割合を占める部分です。
ここで会社によって差が出るのは、職人を直接抱えているかどうか、段取りなど施工体制の合理化の格差、職人の稼働効率の差、下請け業者の差などによります。

職人を直接抱えていれば、下請け業者の経費がかからないので当然安価になります。
また、住宅会社に1年を通じて安定的に仕事があれば職人の手間賃も安定しますが、仕事が集中するとその時期だけ多くの職人を確保しないとならなくなるので、高い手間賃を払ってでも職人を探さなければならなくなります。この為、多くの住宅会社にとって工事量の平準化は大きな課題です。
工事の繁忙期を避け、比較的工事量が少なくなる時期に工事を依頼するのも価格交渉する上で有効です。住宅会社だけでなく、現場で作業を行う職人にも大きなメリットがあるからです。

また、建物の仕様や工法を少しだけ変更する事で手間賃が大きく変わる事もあります。現在では住設・建材メーカーでも現場での作業を極力省いた省施工の商品を積極的に開発しています。ただ価格交渉するだけでなく、住宅会社からも提案してもらう様にしましょう。

最終的な金額の取り決めは建築主と住宅会社双方が納得した上で行いたいものです。
無理な値引きを要求すると決して良い結果にはなりません。どうしても折り合いがつかなければ別の業者にあたりましょう。

近年では新築住宅のみならずリフォームでも、建物の仕上げ部分で2 年以上の保証期間を設けるのは当たり前の様になりました。無理な値引き要求をしても、元々技術力のない会社は別として、通常の住宅会社であれば2 年以内にクレームとなる様な手抜き工事はほとんど行わないと思いますが、保証期間を過ぎたあたりから不具合が発生する可能性は否定できません。それが瑕疵と呼ばれる様なものであれば住宅会社としても対応しない訳にはならないのですが、瑕疵に該当しない不具合であれば自費で修理しないとならなくなります。

無理な値引き交渉は結局は高くついてしまうのです。

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