不動産を購入する際、不動産会社の営業担当者は欠かす事のできない存在です。
物件探しから物件案内、住宅ローン等の相談や購入アドバイスなど、様々な面で頼られる存在でなければなりません。
一方、大袈裟に言えば、不動産は命を担保(団体信用保険等)にして手に入れる大切な資産です。
万一、地震等の天災で建物が大きな被害を受けても、住宅ローンだけは残ります。
不動産を扱う不動産会社の営業マンに求められるものは、一般消費材の営業マンのものとは比較にならない程大きいはずです。
ところが、不動産会社の営業マンの全てが、専門的な知識を持ったスペシャリストとは限りません。
不動産取引を行うために必要とされる国家資格の、宅地建物取引士の資格を持っていない営業マンも珍しくありません。
(宅建業法上では、事務所で業務に従事する者5人に対して1人の割合で宅地建物取引士がいれば良い事になっています。)
私が30年以上勤務していた会社も、母体は不動産会社(誰でも名前は聞いた事がある会社です)でしたが、営業マンの半数近くが無資格者でした。
他業界から転職してきた人や新入社員でさえも、不動産の営業マンとして日々業務に就いていました。
もちろん上司や先輩営業マンの指導を受けながら、日常業務に取り組んでいるのですが、上司や先輩営業マンであっても、そのほとんどが、土地や住宅ローン、不動産取引等の知識はあっても、建築に関する知識はほとんどありませんでした。
我が国の不動産取引では、土地の価値に重きが置かれ、20年を過ぎるとほとんど資産価値がなくなってしまう建物が軽視されるのは、ある面仕方のない事だったと思います。
長年建築に携わってきた建築の専門家から見れば、不動産の営業マンに建築の知識がないのは当たり前の事なのですが、一般のお客様はその様に思っていない事が問題なのです。
購入しようとしている建物に不安があって、不動産会社の営業マンに尋ねた結果、「心配ありません」と言われれば、ほとんどの方は信用してしまうでしょう。
不動産の営業マンは建築のプロではない!
不動産会社の営業マンは、例え不動産のプロであっても、決して建築のプロではありません。
不動産業者の言う事を信用して物件を購入した結果、トラブルになるケースは過去にもたくさんあります。
しかし、契約後にトラブルに巻き込まれても、ほとんどが泣き寝入りするしかありません。
仮に営業マンに悪意はなかったとしても、建物の欠陥については、わからないのです。
「大手ハウスメーカーや大手ゼネコンが建てた家なら絶対に安心」と思っている不動産営業マンは、少なくありません。
テレビドラマの様なスーパー営業マンは、現実には身近に存在しないのです。
残念ながら、これが現在の不動産取引の実態です。
物件購入で失敗しないためには、購入前に建築の専門家に見てもらうと共に、ご自身でも建築知識を身に付け、物件の良し悪しを判断する目を養う事が必要だと思います。