工事の丸投げ(一括下請負)について

横浜のマンション傾斜の問題で、建設業界の「丸投げ」が指摘されています。
丸投げとは、工事を請け負った建設業者が施工において実質的に関与せず、下請け業者にその全部または
独立した一部を請け負わせる事をいいます。
問題となった横浜のマンションでは、杭工事が丸投げだったとして取り上げられました。
丸投げは、発注者が建設業者に寄せた信頼を裏切るばかりでなく、中間搾取や施工責任があいまいになる
事で、手抜き工事や労働条件の悪化につながる懸念があります。
丸投げ(一括下請負)は建設業法第22条で禁止されていますが、元請負人があらかじめ発注者の書面による
承諾を得た場合には適用しない事になっています。(ただし公共工事、民間工事における共同住宅等の新築工事については全面的に禁止されているので、丸投げできません)
一戸建住宅の新築工事やリフォーム工事の工事請負契約約款には「あらかじめ注文者の書面による承諾を得た場合を除き、請負者は請負者の責任において、工事の全部または大部分を一括して請負者の指定する者に委任または請け負わせることができない」と書かれているはずです。

戸建て分譲住宅の場合には、発注者の書面による承諾があれば丸投げが可能です。
しかしこの場合の発注者は通常住宅の購入者ではなく販売会社ですから、購入者には実質的に施工した建設会社がどこなのか知る術がありません。
大手ハウスメーカーが建てた家だと思っていても、実際に工事を行ったのは別の下請け工務店だったという事もありうるのです。

上記は発注者の書面による承諾を得ていれば建設業法に違反しないケースですが、注文住宅やリフォーム
では発注者の書面での承諾を得ない建設業法違反となるケースも決してないとはいえません。
特に規模の小さなリフォーム工事では、この様な事が行われる可能性が高いと思います。
元請会社が行っている仕事が下請けの手配だけなどという事も実際にあるのです。
しかし、元請会社の技術者が下請け工事の工程管理や完成検査、安全管理等を行った場合や、発注者との
協議、官公庁等への届け出、近隣工事との調整等について主体的な役割を果たした場合は、下請け工事への実質的な関与と認められるので、その線引きは難しいところです。

一括下請負の禁止に違反した建設業者に対しては営業停止処分等の罰則があるのですが、横浜のマンションの様に何か大きな問題が起きないとなかなか表面化する事はありません。

建設会社選びで失敗しないためには?

我が国の建設業界は古くから「何層にもわたって幾重にも下請けに委ねる」重層下請け構造で成り立ってきました。建設業法も下請けそのものを禁じているわけではありません。
部分的な下請けは、ほかの産業にももちろんあるのですが、我が国の建設業界の下請けの実態はあまりにも酷すぎると思います。大手建設会社や大手ハウスメーカーが建築したからといって決して安心してはいられないのです。

ではどのようにして建設会社を選んだら良いのでしょうか?

いくつかの会社を比較検討して発注したい会社を絞り込んだら、工事責任者や現場管理者と面談させてもらう事をお奨めします。現場の管理体制はどうなのか、工事の発注、検査はいつ・誰が行うのかなど直接ヒアリングして欲しいと思います。ハウスメーカーやリフォーム会社の営業担当者で現場の管理体制や発注体制まで把握している人はほとんどいません。業者選択で失敗しないためには、工事関係者の生の声を決して疎かにしないで欲しいと思います。

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