豊洲市場の土壌汚染対策問題で、地下にたまった水からヒ素が検出された様です。ベンゼン、シアンなどは検出されなかったというものの、今後継続的に詳細な調査を行っていく必要があるでしょう。
我々建築に携わる者は、建物の安全性には十分な配慮をしても、地盤や土壌汚染の対策などは専門でないので、軽視しがちです。
建築関係者の立場から見れば、配管のための地下ピットは必要なものなのですが、土壌汚染の専門家の意見を無視して進めてしまった今回の計画には、問題があったと言わざるを得ません。
さて、家を建てる経験は、多くの人ができるものではありません。
新たに住宅を入手する人でも、その手段には建売住宅や分譲マンション、中古住宅を購入するという方法もあるからです。
しかし、自分で家を建てるのは、面倒な事が多いのも事実です。
土地を探したり、住宅ローンの審査を受けたり、住宅会社や設計事務所を探したり、建て替えする場合には、土地を探す代わりに仮住まいを探したり、引っ越しの準備も必要になります。
また、住宅会社と契約を結んでからも、プランや仕様の打ち合わせをしたり、工事着工前には近所に挨拶回りをしたり、工事が始まれば、工事の検査に立ち会ったり、現場の職人に気を使ったりで、休む間もありません。
仕事を持った人ならば、せっかくのたまの休みも、ほとんど家の工事の事で潰れてしまいます。
「家を建てる」という事は、建築主にとっても人生の中で何度もない一大事業なのです。
しかし、注文住宅を建てた人の感想を聞くと、ほとんどの人が、「大変だったけど楽しかった、良い経験になった、いろいろと勉強になった、工事が終わってしまうのが寂しい」など、肯定的な意見がほとんどです。
家を建てる事で得られるもの
つまり、滅多に経験できない事を体験できて良い刺激になったり、いろいろと自分で調べたり研究したりして、知らず知らずのうちに、家づくりに自分自身も積極的に参加しているからです。
また、プランなどの打ち合わせを通して、住宅会社の担当者とコミュニケーションが深まったり、家族の中にも今まで知らなかった一面を発見する事もあります。(たまに住宅会社の担当者の目の前で、夫婦喧嘩になったりする事もありますが、結果的に家族の結束が高まる事が多い様です。)
そして工事が始まれば、現場には毎日たくさんの職人が来ます。20歳前後の若者から、60歳過ぎのベテラン迄、年代層も多様で、普通の職場や仕事先では、ほとんど会う機会も話す機会もない個性的な人達がたくさんいます。
今の職人は昔の職人とは違って、見た目はごつくても、礼儀もしっかりしている人が多く、わからない点などを質問すれば丁寧に答えてくれます。
そして工事が終わる頃になると、専門用語や材料の名前、建築コストなども覚えて、普通の営業マンでは歯が立たない位にまで、建築知識を持つ様になる建築主もいます。
この様に、たくさんの人に家を建てる経験をして、その楽しさを味わって欲しいと思います。
新築が無理なら、リフォームでも良いと思います。私は、一度リフォームを通じて家作りに関わって、その楽しさを知り、それが趣味になってしまった人もたくさん知っています。
私が以前勤めていた住宅会社には、一度リフォームした事でリフォームの魅力にはまってしまい、ほぼ毎年の様に何らかのリフォームを繰り返すお客様が何人もいました。中には、次第にプラン作成から図面描き、仕様決めまでほとんど自分で行う様になり、最後には私達は、ただ言われた通りの職人を手配するだけになったというお客様もいた程です。
家を建てたり、リフォームするのは、確かに手間のかかる面倒な事です。しかし、不満のある住宅に我慢して住んで、ここが悪い、あそこが欠陥だと文句ばかり言っているほうが精神的にも良くありません。
一生に一度は、家づくりに関わる体験をしましょう。