日本の住宅ビジネスは、今後10年の間に大きく変わると言われています。
そのきっかけは、2013年には820万戸あると言われた空き家の増加です。
これは国内の住宅全体の13.5%を占め、2040年には40%を超えるとの試算もあるといいます。
そんな中、民泊を筆頭とする「空き家ビジネス」が盛り上がりを見せつつあります。
ひとつは、「空き家貸し出しビジネス」です。
大手不動産会社や小田急、京王、京浜急行電鉄などの鉄道会社、大手ハウスメーカーなどでは、未活用の住居などをリフォームし、短期で貸し出したり、旅行者や外国人観光客の民泊の運営を受託する事業に参入する計画などがあります。
また、「空き家買い取り、再販ビジネス」では、インスペクションのノウハウを持った中古住宅事業者が、その特徴を活かしてビジネスを拡大するチャンスを窺っている様です。積水ハウスでは、著名なデザイナーが内装を監修する中古マンションの大規模改装事業を立ち上げたそうです。
そして、空き家の見回りや清掃、遺品整理などの代行サービスを行う「空き家管理、メンテナンスビジネス」には、これまでの様に地域の中小不動産会社のみならず、大手不動産仲介業者も将来のビジネスチャンスを見通して参入する傾向が見られます。
「空き家ビジネス」の課題
しかし、我が国の「空き家ビジネス」には、大きな課題がある様に思います。
これまで家は「使い捨て」が前提だった我が国で流通する中古住宅は、欧米と比較して「質が悪い」ものが多いという点です。
また、中古住宅の質の良し悪しを判定するホームインスペクションのノウハウを持つ人材も不足しています。
建築士の資格があれば、中古住宅の良し悪しがわかるというわけではありません。
床下や天井裏に潜った経験のない建築士はたくさんいます。
物件を適切に診断できないと、再生に莫大なコストがかかってしまったり、再生後の建物の安全性に問題があるなど、事業としては成り立たなくなってしまうためです。
また、都市圏の居住者が地方の空き家を相続する場合など、空き家が増加している地域では、人口の減少や地域経済の衰退などの問題を抱えている可能性が高いので、地域の活性化や地域コミュニティーの再生などをセットで提案する必要があるでしょう。
我が国の中古住宅流通市場は、非常に未成熟な市場といえます。
これまで空き家が増え続けてきたにもかかわらず、住宅会社は新築住宅を建て続け、消費者も新築志向が強かったため、何の疑問も感じる事なく現在に至りました。
しかし、今後10年で、日本の住宅ビジネスは間違いなく大きく変わるはずです。
一部の住宅メーカーでは、すでに海外の不動産市場へ主軸を移そうとしています。
国内では、住宅ストックの活用に軸足を移すことが求められます。
いつまでも新築住宅のみに頼っていては、生き残れません。
住宅業界では、いち早くサービスの転換をはかり、この様な変化に対応できる人材を早期に育成する必要があるでしょう。
Vietnam ho-timinn 2016.09.19