博多駅前の陥没して通行止めになっていた道路が、本日午前5時に通行再開しました。
一部の配管材は簡易型を使用し、仮復旧の状態だといいますが、予想を大幅に上回る早期の復旧に拍手を送りたいと思います。
さて、ハウスメーカーは自動車メーカーと比較される事が多い様に思います。
いずれも販売する商品が比較的高額で、ローンを組んで購入する事が多いところと、常に潜在需要が存在し続けていて、将来減る事があっても決して無くなる事はないところに共通点があります。
しかし、住宅と自動車で決定的に異なるのは、住宅の商品指名率が圧倒的に低いという事ではないでしょうか。住宅には自動車の様に、顧客からこの商品(自動車であれば、クラウン、アルファード、GTR、86など特定の車種の購入希望が多い)でなければならないと言われる商品があまりありません。
事実、大手ハウスメーカーで販売している住宅の商品名を知っている人は少ないでしょう。
イズ・ステージ、グラヴィス・ベルサ、センチュリー、ジーヴォシグマ、キュービック、ドマーニ・・・などと聞いてどのハウスメーカーのどんな住宅なのかわかる方は、余程研究熱心の方だと思います。
一般的には、どのハウスメーカーの商品にも大きな違いはなく、差別化された特徴もあまりないと思われています。
「商品」であるためには建築場所がどこであろうと、一定の性能・品質が保持され、それが特定の企業によるものであることが識別されなければなりませんが、住宅に関しては、別の方法で販売促進を図っていた様に思います。
住宅はもともとハウスメーカーが誕生して以来、展示場と営業マンを核として顧客開拓をすすめてきました。展示場の数と営業マンの数および質で販売戸数が決まる傾向があるため、商品の差別化よりも会社の知名度と営業マンの質で決まるというのがほとんどでした。
逆に言えば、商品ブランドが確立している住宅はほとんどないと言えます。
したがって、自動車の様に商品が顧客に指名されるという事がほとんどない住宅では、顧客との折衝の早期の段階から営業マンが介入する必要性があり、販売に多くの手間がかかる事になります。住宅のコストを引き上げている原因のひとつに、営業マンの人件費がありますが、この様な営業マンの手間を減らす事ができれば住宅のコストは間違いなく改善されます。従来の販売方法で大量販売しようと思えば、大量のモデルハウスと大量の営業マンが必要になります。
そして契約できなかった営業マンの人件費は、全て商品価格に含まれてしまうためです。
顧客に指名される商品ブランドを確立するためには、顧客ターゲットを可能な限り絞り込んで、提供する価値を決定し、特定する価値においては競合他社を上回る商品を作って、それを顧客に知らせ、購入意欲を高めてもらわなければなりません。
住宅業界では、こうしたプロセスよりも、できる限り数多くの顧客をモデルハウスに集客し、あとは営業マンのテクニックで自社の商品をアピールして販売するという手法が主流だった様に思います。営業マンのセールストークに乗せられて契約したら、説明と違ったなどという事も起こりがちです。
商品ブランドを確立しようにも、住宅は自動車の様に工場内で流れ作業で生産できる訳ではないので、見本と全く同じ品質の商品が必ずしもできるとは限らないというネックがあります。
よって商品に明快なセールスポイントがない(誰にでも合うが中途半端)、他社商品と差別化できるものがない(何でもできるが特長がない)、、営業戦略が不明確(誰に対してアプローチするのかわからない)、プランニング・見積もりに時間がかかる、施工品質にバラツキが多い、クレームが多い、コストダウンができない、利益率が低いなどのデメリットが多く、結果として競合他社よりも安い価格を提示するしか勝つ方法がないので、さらに収益を圧迫する事になります。
しかし、住宅会社が商品開発を全く行っていないわけではありません。大手ハウスメーカーを始め、中堅の住宅会社にも魅力的な商品がたくさんあります。
ただそれらの情報が自動車の情報の様に、なかなか伝わってきません。私の様に住宅関係の仕事をしていても、大手ハウスメーカーの住宅の商品名やその特徴などほとんど情報を得る機会がありません。自ら住宅展示場に出向いて情報収集するしかないのですが、ハウスメーカーのモデルハウスに行くと、氏名の記入を求められ、その後、営業マンから熱心な営業攻勢をかけられる事はすでにお決まりなので、思わず躊躇してしまう方も多いのではないでしょうか。
いろいろな住宅を納得のいくまで自分で調べて、じっくり検討したいと思う方にとっては、住宅展示場はあまり相応しい場所とはいえません。
これから目指すのは自動車メーカーの販売方法・・・?
一方、自動車の場合は、好きな車、欲しい車は自ら事前に調べ、自分から買いに行くのが普通です。そうでない車はどんな営業マンが売り込みに来てもほとんど買う事はありません。
これからの住宅も、同じような販売方法を目指すべきだと思います。
人が自動車を購入する時、単に移動用の道具として選ぶ訳ではなく、運転が楽、運転が楽しい、乗り心地が良い、荷物がたくさん積める、所有しているだけでステイタスが高い、燃費が良い、価格の割に高性能など、そこから生まれる価値を買っていると思います。
住宅も同様に、地震や台風に強い、省エネ性能が高いので冷暖房費を節約できる、間取り変更などの可変性が高い、収納量が豊富、メンテナンス性が高く長持ちするなど商品が持つ魅力が十分に顧客に伝われば、営業マンの余分な説明やセールストークがなくても、価値観がマッチした顧客から選ばれるはずです。
営業マンの手間を省力化して人数を削減し、契約後の打ち合わせに時間をかける様にすれば、住宅の価格はもっと安くなって、欠陥住宅も少なくなるのは明らかです。
着工戸数が減少して住宅会社の競争が激化し、顧客のライフスタイルの多様化に一層拍車がかかる事が予想される昨今、住宅の販売方法にも変化が必要だと思います。