ホームインスペクションで見つかる不具合の中で、リフォーム工事が原因と思われるものが数多くあります。
せっかく費用をかけてリフォームしたのに、見えないところで手を抜かれては意味がありません。
リフォーム工事では、新築時よりも施工がしにくい事もあるのですが、品質管理の甘さが一番の原因だと思います。
さて、皆様は「スムストック住宅」というのをご存知でしょうか。
「スムストック住宅」とは、築年数だけで価値が決まる日本の中古住宅市場に一石を投じようと、大手ハウスメーカー10社が推進する中古住宅を指します。
旭化成ホームズ、住友林業、積水ハウス、ダイワハウス工業、パナホーム、トヨタホーム、三井ホームなどの我が国の名だたるハウスメーカーが普及活動に乗り出しています。
しかし、従来不動産売買仲介会社が築年数だけで査定していたものを、単に「大手ハウスメーカーの建物は、より高く評価しよう」というだけのものにも思えてしまいます。
その理由の第一には、スムストック認定の条件にあります。
スムストック住宅として認定されるためには、住宅履歴の管理・蓄積、築後50年以上の点検・メンテナンスプログラムを有する事、新耐震基準レベルの耐震性能の3つの条件がありますが、どれもそんなに厳しい条件とはいえません。
また、スムストックの査定方式は、構造躯体のスケルトン部分(建物の6割の部分で、償却期間50年)と内装設備のインフィル部分(建物の4割の部分で、償却期間15年)に分けて査定するため、従来の査定と比較すると建物の査定額は自ずと高くなり、平均で500万円以上の査定額差が発生するとも言われています。
スムストック住宅は普及・定着するか?
構造の償却期間を50年と長くする理由は、大手ハウスメーカーの施工なので、しっかりしているという理由に他なりません。
しかしスムストック査定だからといって、保証の延長等があるわけでもないのです。
そして査定を行うのは、優良ストック住宅推進協議会が主催する試験に合格した「スムストック住宅販売士」のみとしていますが、そもそもこの協議会自体が、大手ハウスメーカー10社で構成している団体なので、資格者の能力も100%信用できるとはいえません。
同協議会では、スムストックの普及・定着を目指していますが、私にはとても定着する様には思えません。
大手ハウスメーカーが施工して、さほど高くはない条件をクリアしただけで、建物査定価格が500万円以上高くなるだけでは、売主に対してのメリットはあっても、買主に対するメリットは全くありません。
建物査定の方法や規準なども、ユーザーに対してよりオープンにする必要もあります。
今のままでは、「スムストック住宅は大手ハウスメーカーの顧客の囲い込みが目的」と言われても仕方がないでしょう。
ハウスメーカーの押し付け査定方式と呼ばれないためにも、改善が必要だと思います。
また、スムストック住宅の購入を検討している方は、スムストック方式で査定した価格が正しい価格という保証は一切ありません。
実際の市場価格と大きくかけ離れていたり、大手ハウスメーカーの施工ではなくても、より品質の高い安価な物件がある可能性もあります。実際の相場価格を調べて、冷静に見極める事を忘れない様にして欲しいと思います。