ホームインスペクターの弱点

ホームインスペクターとして住宅の診断・調査を専門に行うようになって1年半になりました。
ホームインスペクションは、これから住宅の購入やリフォームをしようとする方にとって、非常に有意義な事だというのを確信しているのですが、その反面、第三者であるが故の欠点がある事も否めません。

ホームインスペクションの内容は、リフォーム会社が行うリフォーム前の現場調査と非常に良く似ています。リフォーム会社でも、リフォームの依頼を受けるとまずは建物の調査・診断を行い、現況を把握した上で、リフォームプランと見積書を作成します。リフォームプランや見積書の中には、不具合箇所の報告や改善提案を含みます。

建物の調査・診断には、一定の知識や経験、スキルがある人が行ったとしても、常に見落としや不具合の原因についての判断ミス等のリスクが伴います。
これは中古住宅購入前のホームインスペクションでも、リフォームの見積書を作成するための現場調査でも同じです。

リフォーム会社の現場調査で万が一見落としがあったとしたら、そのツケは見積もり漏れとなって自らが負担する事になる可能性が高いのに対し、ホームインスペクターは第三者(当事者でない・・)であるが故に、過失責任がいま一つ明確でない様に思います。
不具合の見落としやちょっとした判断ミスが、自らの大きな損失につながってしまうという危機感が、ホームインスペクションの仕事には薄いと思います。
長年リフォーム業に従事して多くの現場調査を経験した後で、ホームインスペクションを行うようになって最初に感じたのはこの点でした。
悪くいえば、ホームインスペクターの調査報告に見落としや間違いがあっても、責任を追求される事が少ないのです。

中古住宅のホームインスペクションでは、時々お客様から「この物件は買いか否か」と聞かれる事があります。
インスペクションでは売買の購入判断はしない事になっていて、判断の基準や価値観は人によっても異なるので、一概には答えられないのが普通です。これは中立性を保持するための事ですが、別の面では他人事とも受け取られてしまいます。
けれどもお客様は建物を見るプロとして、ホームインスペクターの意見を聞きたがっているのです。
中途半端に言葉をにごしたり、曖昧な回答をしていては、プロに建物調査を依頼したメリットがないと思います。

私の場合は、「築年数の割にマイナスポイントが少なく丁寧に施工されているので、お奨め物件だと思います。」、「小屋裏や床下などの普段は目に見えない部分の施工が雑なので、他に大きな欠陥がある可能性が高いと思います。」程度の話はしています。

ホームインスペクターの責任とリスク

もっとも、リフォーム工事を請け負う事で得られる利益が、1件あたり数十万円から百万円を超える事もあるのに対し、1件の調査費が数万円のホームインスペクションで同じ責任を負うのでは酷だと思います。
ホームインスペクターがなるべくリスクを負わない様にするのは当然でしょう。
そもそも小さな見落としや判断ミスで、その都度訴えられてしまったら、ホームインスペクションの仕事自体が成り立たなくなってしまいそうです。
現在、ホームインスペクターとして従事している人の中にも、業務を継続していく事に二の足を踏んでしまう人も多くなるでしょう。

しかし、今後ホームインスペクションが幅広く認知され、本格的に普及していくためには、不具合箇所の見落としや判断ミスなどで、依頼者に損害を与えてしまった場合などの万一の事態に備えて、損害保険等の制度が必ず必要になると思います。

tiltshift2[1]

千葉市のホームインスペクション専門会社匠住宅診断サービスTopへ戻る