中古住宅のインスペクションで最も多く見受けられる不具合のひとつに、断熱施工の不具合があります。
中古住宅ではグラスウールの断熱材が使われている事が多いのですが、隙間なくきちんと充填されている事は滅多にありません。
特にダクトや給排水配管貫通部周辺の壁、天井埋め込み器具周辺などに雑な施工が目立ちます。
他にも床下の断熱材が垂れ下がっていたり、落下している事もあります。また、階段や押し入れ部分の床下には断熱材が入って
いない事もめずらしくありません。元々居室の床下以外は、断熱材を入れる必要がないと思われていたのでしょう。
またユニットバス廻りでは、外壁面の壁や屋根直下の天井にも断熱材が入っていない事もあります。
現在では、断熱材は外部に面する部分に隙間なく充填するのが常識となっていますが、20年程前までは正しい施工方法が認識されていなかった様です。
断熱材の充填は1989年から公庫融資で義務化されました。多くの住宅に断熱材が入れられる様になったのはその頃からで、それ以前の住宅では断熱材が使用されていないものもあります。もともと我が国では、断熱工事はあまり重要視されていなかったのです。
軽視されがちな断熱工事
しかし、築年数の浅い住宅でも断熱工事の不具合は比較的多く見られます。断熱材の充填は簡単な作業と思われるためか、現場では何かと軽視されがちなのです。断熱欠損が多ければ当然の様に断熱効果は得られません。住宅の基本性能として重要な断熱工事でなぜ不具合が多いのでしょうか?
断熱材の充填作業には専門職が存在せず、ほとんどの現場では大工さんがついでの作業として行う事が多いのです。責任の曖昧さが雑な施工の要因になっているのは間違いありません。たとえ大工さんがしっかりとした施工を行ったとしても、後から電気配線や換気ダクトの配管、給排水管の配管などの際に断熱材を動かして、隙間だらけにしてしまうケースが多い様です。こうなると全く断熱材の効果は発揮できません。
現場監督のチェックや検査による指示でしっかりと是正できれば良いのですが、そうでない場合はそのまま完成してしまいます。
大手ハウスメーカー施工の物件でも安心できません。
また、リフォーム済の物件も要注意です。リフォームを行った際に断熱材を撤去してしまった例もありました。
この様な不具合が発生する背景には、現場の管理体制や品質管理にももちろん問題があるのですが、職人の意識の低さも問題です。
何のための断熱材なのか、建築の職人ならわからないはずがありません。建築業界が信用を取り戻すためには、現場の職人ひとりひとりが高い意識を持つ事が必要です。