私は学生時代に水道工事のアルバイトをよく行っていました。
大学の友人達の多くは、建築設計事務所でアルバイトをしていましたが、私の場合は異質でした。
水道工事といっても、アルバイトが任される仕事はもっぱら穴掘りや排水枡の中のモルタル塗りなどが専門でしたが、ときどき外水道の給水配管などを行う事もありました。(あくまで外部専門です。)
水道配管は仕上がってしまうと隠れてしまう場所に設置される事が多いので、狭くて施工しにくい場所での作業が多く、万一施工ミスがあると漏水事故につながって大きな損害を及ぼすため、責任重大な仕事です。
配管工には一定の技能と器用さが必要でした。
数年前から住宅の新築現場の給水や給湯の配管工事はヘッダー工法が用いられる様になり、昔から行われている塩ビ管を継手で一本一本つないでいく工法(先分岐工法)は今ではすっかり見られなくなりました。
今や、配管工事はヘッダー工法が中心です。
ヘッダー工法のヘッダー部分(水色が給水管、オレンジ色が給湯管)
従来の先分岐工法と比較して、湯待ち時間(水栓を開いてから湯が出てくるまでの時間)が短いなどの使用上のメリットもありますが、最大のメリットは施工性の良さと漏水リスクの低減でしょう。
従来の塩ビ管を使用した工法と比べて配管材料費は高くなっても、作業時間が大幅に短縮できるので、工賃は安くなります。
従来の配管には、曲がりの部分や長さ4ｍを超える部分にはチーズ、エルボ、ソケットなどの継手が設けられ、継手の接続部分の接着技術、職人の腕の良し悪しによって漏水が発生する可能性がありました。接着剤の付け忘れや継手の破損による漏水事故もたびたびありました。
ヘッダー工法では基本的には継手はヘッダー部と配管の末端部分だけなので、途中の壁内や床下の漏水危険箇所がなくなって、点検箇所もヘッダー部と水栓部に集約できる様になりました。
また配管の接続部分もコネクターにカチッと差し込むだけなので、素人でも容易に接続できます。
そのため、熟練工の技術は不要になり、経験の少ない未熟な配管工も増えています。
ヘッダー工法の弊害
ヘッダー工法は非常に優れた工法なのですが、一方では職人は従来からの継手を使った配管を行う機会が少なくなり、リフォーム現場などで従来の工法で施工を行う必要がある場合などでは、不慣れな職人が作業を行うケースもあります。
また、新築住宅でも排水管は従来からある工法で施工するので、未熟な職人が施工するとミスが発生しやすくなってしまいます。
せっかくの工法の進化によって未熟な職人が増えて漏水事故の増加につながる事がない様、部分的な水廻りのリフォームでは特に注意が必要です。
