断熱工事の不具合

ここ数日間、柱のひび割れや基礎のクラック、柱の歪みなどの構造躯体に関するご質問やお問い合わせが目立っています。ご自身が住む住宅に対して関心が高まるのは非常に良い事だと思っています。
電話問い合わせにもできる限り回答させていただいておりますが、気になる点が多い場合には、建物点検サービスをご利用ください。県外の点検も承っております。

さて、中古住宅のホームインスペクションで最も多く見かけるのが、断熱工事の不具合です。
我が国で公庫融資の際に断熱工事が義務化されたのは、28年前の1989年のことです。
そして国内での断熱への意識が高まったのは、1999年に改正された次世代省エネルギー基準がきっかけとなっている様です。
この基準により、先進国の中では最低だった日本の住宅の断熱基準が、やっと欧米基準の最低レベルに達するようになったといわれています。

それ以前に建てられた住宅では、最上階の天井や1階の床下に断熱材が全く入っていなくても、決して珍しい事ではありませんでした。我が国の木造住宅は「夏暑くて冬は寒い」のが当たり前だったのです。
しかし比較的築年数が新しくても、断熱工事の不具合は多くの住宅に見られます。

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上の写真は、有名な住宅会社施工の築10年未満の住宅の床下の様子です。
一部床下の断熱材が入っていない部分があるのがわかると思います。
落下してしまった様子はないので、施工忘れか、材料が不足してしまいそのままにしてしまった可能性があります。

そして下の写真は、大手ハウスメーカー施工の築20年未満の住宅の天井裏の様子です。
天井断熱材が施工されているものの、雑な施工のため隙間が多く、十分な効果が得られそうにありません。

いずれも名前を言えば誰でも知っている国内で有名な会社が施工したものです。
これらの施工はこの時代の住宅では決して特殊な例ではなく、他の会社でも会社の規模を問わず同様の施工をたびたび目にします。
「図面に断熱材を入れる様に指示されているので、とりあえず入れておこう。」程度の意識だったと推測できます。

そして最後の写真は築29年の工業化住宅の床下の様子です。
この年代の建物にしては珍しく、床下に断熱材が施工されていました。
しかし経年劣化のため一部が垂れ下がってしまい、大きな隙間が空いています。
また、リフォームで排水管の新設を行った際に、配管廻りの断熱材が撤去されてしまっている様です。

断熱材は丁寧に隙間なく敷き詰めなければ、効果は半減してしまいます。
現在は省エネ意識も高まって断熱工事に対する職人の意識や品質管理も少しづつ向上していますが、以前は単に「断熱材が入っていれば良い。」という考えが普通でした。
水道配管や電気配線工事の邪魔になるからと、撤去してしまう事もあります。
残念ながら我が国の中古住宅の多くは、断熱性能に関してはあまり期待できそうにないのが現実です。
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経年劣化による断熱材の垂れ下がりと、リフォーム工事による配管廻りの隙間

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