街で良く見かける事が多くなった軒の出がない四角い家。
過去に何度もこの様な家のデメリットをお伝えしてきました。
しかし最近は四角くて軒がないだけでなく、南面が全面ガラス張りになった家や、大きな木製サッシを用いた家なども目にする様になりました。
この様な「デザイナーズ住宅」と呼ばれる建築家が設計した住宅が都市部を中心に人気の様です。
私は以前の勤務先に在職中に、この様な家に住む方から雨漏りの相談を受け、非常に苦労した経験があります。
相談を受けた時には既に築10年以上経過していましたが、築2~3年経った頃から雨漏りが多発する様になり、建築した会社に何度修理してもらっても、しばらくすると雨漏りの再発を繰り返してきたとの事でした。
室内を見せてもらうと、窓枠などの木部は水染みで黒ずみ、天井や壁の壁紙もカビで真っ黒で、いかにも健康に悪そうな感じ。
おしゃれなデザイナーズ住宅もこれでは台無しです。
さっそく雨漏り原因の調査を行いましたが、原因は比較的簡単に見つかりました。
原因は外部のシーリング切れでした。
サッシとサッシ、ガラスどうしの突き合わせ、サッシと外壁の取り合いなどあらゆる部分の防水をシーリングに頼り過ぎた結果です。
シーリングだけの防水は雨漏りのもと。
シーリングは部材と部材の隙間を埋める材料ですが、建物が振動や強風などを受けて揺れると、部材どうしが動いてシーリングが切れてしまう事があります。
ましてや相談された建物は鉄骨造で近くには幹線道路もあって、とても揺れやすい建物でした。
この様な建物ではシーリングには二次防水の役割しか与えないか、別の方法で二次防水をしっかりと行う事が鉄則です。
一次防水に何らかの不具合があって防ぐことができなかった雨水の侵入を防止するのが二次防水です。
また軒がないため紫外線の影響も受けやすく、シーリングの劣化も余計に早くなるため、尚更配慮が必要です。
それでも建物に深い軒があれば雨が外壁に直接あたるのを防げたのに、軒がないため少し風が吹くだけで雨が外壁やサッシに直接吹き付けてしまうので、シーリング切れは致命傷になります。
このまま何度修理を繰り返しても、根本的な解決にはなりません。
根本的に直すとなると、サッシや外壁のやり換えなどかなり大掛かりな工事が必要になる状態でした。
そして依頼主と様々な修繕方法を検討した結果、最終的にはあまり多くの費用をかけずに直すことになり、シーリング材を高耐久のものに変えたり、窓に庇を付ける程度にとどまりました。
おそらく4~5年程度は大丈夫だったはずです。
今もこの様なトラブルを抱えている住宅は決して少なくないと思います。
デザインを優先しすぎるばかりに住宅性能をおざなりにすると、後で取り返しがつかなくなります。
デザイナーズ住宅を建てる際には、雨漏り等のリスクに対してどのような対策がとられているのか、設計者や施工者に十分に確認して納得した上で実行する必要があると思います。