先日、去年全面リフォーム工事を行ったというマンションの建物調査依頼を受けました。
工事はほぼ完成しているものの不具合が多く、現在リフォーム会社とトラブルになっている様です。
そのリフォーム会社は首都圏では比較的知名度の高いG社。
関西方面にも多くの営業所やショールームを構えている様です。
主にマンションリフォームを中心に営業活動を展開しています。
依頼者は「工事中から問題が多く、完成した現在でも不満が解消されずに引き渡しを受ける気持ちになれない」との事。
そこで「工事に瑕疵や欠陥がないかどうかを専門家の立場で調べて欲しい」という依頼でした。
調査を行ってみると、目に見える仕上げ工事の傷や汚れ以外にも複数の不具合が確認できたのですが、最も重大な問題は床のフローリング工事にありました。
床材はマンションリフォームで良く使用される直貼り遮音フローリングでしたが、既存のカーペットを剥がして古い床組み(現場は築40年超のマンションです)の上にそのまま貼られている様でした。
このフローリングはコンクリートの上に直に施工して遮音性能を発揮するものなので、二重床の上に貼っても期待する遮音効果は得られません。
通常のフローリングよりも価格は2倍以上するのに、これでは何のために採用したのかわかりません。
また、和室を洋室に変更した部分については、畳下のポリスチレンフォーム(発泡スチロール)の上に直接根太を並べて合板を貼り、その上に直貼りフローリングを貼っている事が工事中の写真からわかりました。
この方法ではちょっと重量のある家具等を置いたら、そのうちに床がたわんで下がってしまう恐れがあります。
将来発生する可能性のあるリスクを考慮したら、通常行わない施工法です。
なぜこんな施工をしてしまうのでしょうか。
建築素人でもできるマンションリフォーム営業
工事の見積書を見ると、フローリング工事についてはパック価格と表示されていて、床の下地をどうするかについてはどこにも記載されていません。
工事の明細については全くわからないのです。
こうした方法は大手のリフォーム会社で良く見かけるやり方で、見積もりを提出する段階では具体的な施工方法が決まっていない事も多いのです。
また営業マンが建築の素人である事も多く、会社のマニュアルに沿って見積書を作成し、現場管理までこの様な営業マンが担当すると、契約後の施工方法は職人任せになります。
職人は予算に合わない工事は行わないので、本来必要な工事がこうして省かれてしまうのです。
万一施主が施工方法に対して注文でもつければ、「それは見積書に含まれていないので追加工事になります。」と言われてしまいます。
この現場もそんな感じだった事が想像できます。
実際に間取り変更を含む500万円近い工事なのに、手書きの平面図さえも受け取っていないとの事。
会社の規模の割に非常にお粗末な仕事だと思います。
和室の床組みの不備を指摘すれば、間違いなく「それは見積に入っていない」と言われそうです。
しかし明細が書かれていない見積書を見ても、一般の消費者がどこまで見積に含まれているのかなどわかるはずがありません。
構造体に手を加えないマンション専有部分のリフォームは、建築素人の営業マンでも勤まってしまうため、実は戸建て住宅のリフォーム以上に注意が必要です。
マンションリフォーム専門の会社の営業マンには、建築の素人が多いと思っておいた方が良いでしょう。
そしてマンションリフォームに欠陥があっても大きく騒がれないのは、雨漏りや構造躯体などの重大な欠陥ではないためで、決して欠陥が少ない訳ではありません。
建築素人でも比較的簡単に営業できるマンションリフォームだからこそ、業者選びは慎重に行う必要があります。