今年1月に静岡県で、建築士の免許を持たない従業員に戸建て住宅の設計や工事監理の業務を行わせたとして、建設会社の経営者が逮捕されました。
工事関係者からの情報提供がきっかけだったそうです。
こうした情報提供がないと、建築関係の違法行為の取り調べが積極的に行われる事はありません。
逮捕者が出る事例は極めて稀なケースだと思いますが、この業界では建築士の資格を持たない人の設計や、建設業の許可のない業者のリフォーム工事が頻繁に行われているので、これは氷山の一角です。
一番の被害者はそうした事実を知らずに工事を依頼した建築主でしょう。
これでは顧客の信頼が得られるはずがありません。
住宅・リフォーム業界のイメージを回復するためには、業界全体の意識改革が必要です。
今回情報提供を行った工事関係者の様な人がどんどん増えると良いと思います。
さて最近、有望な非上場の中小企業への投資やM&Aを手掛けている企業様から、住宅リフォーム・リノベーション業界についてのヒアリングを受ける機会がありました。
住宅リフォーム・リノベーション業界は過去に私が20年以上就業していた業界ですが、人口減少・新規住宅着工件数の落ち込みにも関わらず、将来の成長性が高い業界として評価し、注目している様です。
また、リフォーム会社のM&Aも活発化しているそうです。
買い手の目的としては、やはり専門人材(有資格者、建築技術者、営業のスペシャリスト)の確保や営業エリアの拡大、事業拡大が上位を占めている様です。
一方、以前から政府はリフォーム・中古住宅流通市場を20兆円規模に育成するとの方針を打ち出していますが、現状は7兆円弱程度となっていて、実態とは大きくかけ離れています。
このまま微増の状況が続く様だと、新規参入企業が増えれば増えるだけ競争が激化し、他社と明確に差別化できない会社は存続できなくなるでしょう。
確かに住宅ストックの老朽化や少子高齢化などによって潜在需要は高いと思うのですが、国の思惑通りになっていないのが現状です。
原因としては、新築と同様の長期ローンなどの金融支援がない、中古住宅評価制度が不適切(使用可能な残存期間などが適正に評価されない)などが考えられるのですが、一方では様々な業種・業態の事業者が新規参入しながらも、事業を軌道に乗せる事ができずに縮小・撤退する企業が後をたたず、業界として未だに成熟していないところに大きな問題がある様に思います。
企業投資家から見たリフォーム会社の評価
住宅リフォーム工事は建設業法の規定に抵触しない工事が多いため、参入障壁が低く、たとえ建築技術者がいなくても、施工を下請け工務店に丸投げすれば、誰でもすぐに起業する事が可能です。
よって優良業者から悪徳リフォーム業者まで、非常に様々な業者が混在しているのが特徴です。
しかし、設計・見積から施工までのきめ細かい対応が要求される労働集約型のビジネスモデルとなっているため、質の高い工事を行って、真の顧客満足を得るためには、提案力、ノウハウ、技術力、施工管理能力は欠かせません。
安易な気持ちで参入してもそのうち壁につきあたり、トラブルを抱えて成長が止まってしまうケースが圧倒的に多いのです。
今後住宅リフォーム・リノベーション業界が投資家から高い評価を得るためには、潜在顧客へのアプローチの仕組みづくりや社員・職人の人材育成、施工管理体制の確立、特殊工法の開発、地域貢献など、業界全体でレベルアップしていく必要があります。
近い将来、この業界が投資家の方々にとってさらに魅力ある業界となる事を願います。