以前、悪徳リフォーム業者の被害にあわれた方から、ご相談を受けた事がありました。
突然、「屋根と外壁の無料診断を実施している」と言う業者が訪問してきて、軽く屋根の上に上り、「早く修理しないと雨漏りするから」と不安を煽られて、高額な費用で屋根と外壁の改修工事の契約を迫られたという典型的な悪徳リフォーム会社の手口でした。
見積金額は相場の2倍以上で、総額は500万円を超えていました。
この業者には建設業の許可がなかったので、契約書を2つに分けるという念の入れようでした。
一時、高齢者をターゲットにしたこの様な悪徳リフォーム会社が、世間を騒がせていたのは皆さんもご存知だと思います。
一方、現在中古マンション市場ではちょっとしたリノベーションブームです。
「リノベーション」という少しおしゃれで聞こえの良い言葉に、購買意欲が掻き立てられます。
確かに、良心的な業者がしっかりとした品質管理のもとでリノベーションを行うのであれば、中古マンションに新たな価値を創造する事が可能です。
危ないマンションリノベーション市場!
しかし、こうしたブームに付け込み、建設業の許可を持たない業者がマンションリノベーション市場に参入しているのが問題になりつつあります。
建設業法では、500万円未満のリフォーム工事を行う場合には、建設業の許可を必要としていません。
よって、建設業の許可のないリフォーム業者は数多く存在しています。
そして無許可業者の中には、建築技術者(建築施工管理技士、建築士)が在籍していない会社もあります。
今、この様な業者が、マンションリノベーション工事を行うケースが増えているのです。
理由は、小規模なリフォーム工事をコツコツ行うよりも、簡単に儲ける事ができるからです。
確かにマンションリノベーション工事は、構造躯体に手をいれず、建築確認申請や役所の検査なども不要なので、戸建て住宅の増改築と比べると、難易度は高くありません。
建築技術がなくて、戸建て住宅の増改築ができない業者にとっては、恰好のターゲットになります。
しかし建築工事である以上、建築技術者のもとでしっかりとした管理をおこなわないと、欠陥リノベーションになる可能性が高いといえます。
また、工事の発注者(施主)も、マンションリノベーション業者なら建設業の許可があって当たり前と思っています。
こうした事を逆手にとって工事を受注しているのだとしたら、悪徳リフォーム業者とほとんど何も変わりません。
一方では、いよいよ来月から、改正宅建業法(建物状況調査の活用)が施行されます。
既存住宅流通市場の活性化が狙いですが、中古マンションの流通が活性化すれば、同時にこうした「偽リノベーションマンション」が増える恐れがあります。
そして数年後にこの様な物件が市場に出回る様になったら、安心して中古マンションの取引などできなくなってしまいます。
一体何のための法改正だったのか、わからなくなる可能性があります。
今、リフォーム業界全体の良識が問われている様に思います。
また現在、マンションのリノベーションを検討中の方は、業者選定の際には建設業許可の確認をお忘れなく!