今年3月に、神奈川県のリフォーム会社Sに対して6か月間の業務停止命令が出されました。
住宅地を回り、偶然に屋根の不具合を発見したように装って消費者宅を訪問、事実と異なる状況を告げて「このままでは雨漏りする」などと不安をあおり、リフォームの契約を迫った様です。
主なターゲットは高齢者で、契約者の年齢は平均77歳、契約金額の平均は約80万円だったといいます。
この手の悪徳商法は以前からあり、私もこの様な被害にあった方から相談を受けて、業者の責任者と話をした事がありますが、相手は全く素人の様な人でした。
こうした訪問販売の業者に騙されないようにしましょうと言っても、高齢者には難しい様です。
家族や近所の方が見守ってあげないと、このような被害はなくなりません。
さて、最近マンションリフォームの不具合調査を依頼されることが増えました。
先日調査を行ったマンションのリノベーション物件も、残念ながら依頼主が心配していた通り多くの不具合がありました。
マンションリフォームは、共用部分である構造躯体に手を加えることがなく、建築確認申請や公的な検査も不要なので、戸建住宅のリフォームと比べて難易度が低く、建築知識もさほど必要ないと思われがちです。
そのため、マンションリノベーション事業に参入する業者の中には、レベルの低い業者も数多く存在しています。
しかしマンションは、多くの所有者の共有資産です。
施工するマンションの状態によっては、限られた専有部分のみの工事だけではとどまらない問題が発生することがあります。
また、専有部分のリフォームの欠陥がマンション全体に悪影響を及ぼし、最悪のケースではマンション全体の資産価値を低下させることにもなりかねません。
マンションリフォームでは専有部分の欠陥がマンション全体の資産価値を低下させることもある!
マンションリフォームも建築工事なので、消防法や品確法、電気事業法などの関連法規を遵守して施工するのは当然のこと、工事中にコンクリート躯体に品確法の規定を超えるひび割れや劣化、爆裂、鉄筋の腐食、漏水、雨漏りなどの異常を発見したら、発注者と協議し、管理組合に適切な修繕方法を提案しなければなりません。
マンションリフォームで共用部分に著しい劣化や欠陥などが発見された場合に、そのまま見過ごすのと適切な対応をするのとでは、その後一棟のマンション全体に及ぼす影響は全く異なってしまいます。
専有部分のリフォームに関係ないからといってそのまま見過ごす様なら、元請会社の現場管理者は「いったい何を管理していたのだろうか?」と思ってしまいます。
また、管径が50mmを超える排水管が防火区画を貫通する場合は、1m以内を石綿二層管等の不燃材料としなければならないところを通常の塩ビ管で配管してしまうと、万一の火災の際に被害が拡大してしまいます。
同様に1m以内に衛生器具(便器)を接続する場合には、衛生器具自体も陶器等の不燃材料でなければならないところを、樹脂製の衛生器具が使用されているケースも時々あります。
こうした欠陥があっても、元請会社の現場監督が何も知らなければ、そのまま引き渡しされてしまいます。
この様に、構造躯体に関しては全く無関心だったり、関連法規すら理解していない業者も少なくないのです。
特にマンションリフォーム専門業者にこの様な業者が多い様に思います。
(もちろん優良なマンションリフォーム業者もたくさんいます)
私は常々、建設業許可のないリフォーム会社が、元請としてマンションのリノベーションを行っていることの危険性をお伝えしてきました。
もちろん、建設業の許可があるからといって安心できるとはいえないのですが、ひとつの目安になることは間違いありません。
業者選びはあくまで自己責任ですが、マンションの場合は自己が所有する専有部のみならず、多くの人の共有財産である建物全体にも影響を及ぼすという自覚のもとで、より慎重に業者を選んで欲しいと思います。
またマンションリフォームでは、リフォーム工事着手前に申請が必要なことが多いと思いますが、工事内容によっては施工者が建設業の許可業者である事を要件に加えるべきだと思います。
品確法では幅0.5mm以上のひび割れは「著しいひび割れ」、0.3mm以上0.5mm未満のものは「補修が望ましい劣化事象」に相当します。