4月にホームインスペクション(住宅診断)を説明義務化する「改正宅建業法」が施行されてから3か月が経とうとしています。
当初この改正によって、ホームインスペクションの普及が一気に加速するといわれていましたが、果たして国の目論見通りになっているのでしょうか。
手元にデーターがないので正確なことはわかりませんが、感覚的には改正前とほとんど変わっていないように思います。
私は、改正宅建業法でインスペクションが本格普及し中古住宅流通が活性化するという考えには、最初から懐疑的でした。
なぜなら今回の改正には大きな問題点があるからです。
今回の改正は、明らかに売り主側がインスペクションを行うことを想定したものになっています。
そして主導権は、売り主と物件売り出し前に媒介契約を結ぶ宅建業者(不動産業者)が握っているためです。
これではこの業界にありがちな癒着の構図は避けられません。
インスペクションを紹介される立場のインスペクターは、宅建業者に対して弱い立場になります。
また宅建業者にとっては、不動産取引を成立させるために都合の悪い報告はタブーです。
よって、不動産業者から紹介されたインスペクターが行ったインスペクションは、買主にとって必ずしも信用できるとはいえないからです。
インスペクションはあくまでも「買主自らがインスペクターを探して行うべき」だと思います。
インスペクションは不動産業者にとって「うっとうしい」ことなのか?
また、宅建業者の意識レベルも問題になります。
今回の法改正を、「中古住宅流通市場の活性化につながる」という長期的な視野で見れる、意識の高い宅建業者は多くありません。
ホームインスペクションに対して「うっとうしい」、「嫌悪感を感じる」と思っている不動産業者、住宅会社もまだまだ多いといいます。
そういった人たちにとっては、「自分達の目先の利益」でしか不動産売買を考えていないので、中古住宅流通の将来の活性化や住宅産業の今後の発展などはどうでもいいのかもしれません。
今回の宅建業法改正によって、住宅売買に関わる全ての当事者がインスペクションの存在を知ることになった(今までは宅建業者でさえインスペクションの存在を知らない人もいました)のは非常に良いことだと思うので、これからはこの制度が定着する様、業界内の意識改革が重要になると思います。