ホームインスペクションに建築士資格は必要か?

一般的なホームインスペクションといわれるものは、建築士以外でも行うことができます。

しかし、2018年4月に改正宅建業法が本格施行され、宅建業法上の重要事項説明に関わる既存住宅状況調査は、「既存住宅状況調査技術者講習」を受講した建築士以外は行うことができなくなりました。

改正宅建業法施行前に、国交省が「既存住宅インスペクションガイドライン」を策定した際(2013年6月)には、「既存住宅現況検査技術者講習」を受講した建築士または建築施工管理技士が既存住宅現況検査を行うことができたのですが、2018年3月31日をもって建築施工管理技士が除外され、この資格はなくなってしまいました。

この様に宅建業法改正後に既存住宅状況調査が建築士に限定された背景には、悪質な調査技術者に対して、建築士には建築士法その他の関連法令に基づく行政処分(資格取り消し、資格停止など)が適用しやすい点があるためと思われます。
したがって、国は必ずしも建築士以外にはインスペクションを行うことができる素養がないと言っているわけではありません。

よって冒頭で述べたように、既存住宅状況調査以外の一般のホームインスペクションを行うにあたっては、特に建築士の資格は必要ありません。

現在、国内にはホームインスペクターとして一定以上の知識や倫理観があることを明示できる民間資格として、JSHI(日本ホームインスペクターズ協会)が個人に対して付与している「JSHI公認ホームインスペクター(住宅診断士)」があります。

しかし一般の方の多くが、ホームインスペクションの民間資格よりも建築士の国家資格の方が信頼できると思うことでしょう。
一部のインスペクション業者は、「一級建築士による住宅診断」を「セールスポイント」にしていますが、必要以上に建築士資格を強調している業者は、以下の理由から注意が必要でしょう。

ホームインスペクションに必要な知識と建築士に必要な知識は別の分野!

建築士であれば、建物の設計や監理を始めとする様々な建築の業務を行うことができるので、住宅診断においてもそれらの経験を活かせる場面も多いと思います。
建築関連の法規についての知識がインスペクションの現場で役立つこともあるでしょう。

しかし、建築士には様々な種類があり(一級、二級、木造)、業務内容も意匠設計、構造設計、建築確認申請業務、都市計画など多種多様で、主に建築士としての業務で得られるのは、新築の設計や工事監理に関する経験や知識です。
また一級建築士であっても、今までビルなどの大規模建築物の設計を専門に行ってきたので、戸建て住宅に関する実務経験はほとんどないという人も少なくないでしょう。

一方、ホームインスペクション(住宅診断)で必要なものは、建物の劣化事象や施工不良を診断し、適切な修繕、改修方法を助言するための知識や経験です。
両者は同じ建築であっても、全く別の分野の知識です。

建築士だからといって、それがそのままインスペクター(住宅診断士)として優れているとは断言できません。
例えば、床下や小屋裏に潜っての調査など、新築住宅の設計監理業務ではほとんど行うことがないはずなので、住宅診断のクオリティーはインスペクターとしての実務経験がものを言います。

また、欠陥が生じやすい箇所や、調査で見落としがちな箇所などは、施工経験が豊富なほど良く認識しています。

ホームインスペクターが建築士であるに越したことはありませんが、住宅診断で最も重要なのは住宅診断に関する知識や技量、実務経験だということを忘れないでいただきたいと思います。
インスペクションを依頼する際には、依頼するインスペクターがそれまでどんな業務を行ってきたのかを良く見極めることが大切です。

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