弊社には、時々住宅リフォームを行った方からのクレーム相談が寄せられます。
「工事がずさんで不満が多く、施工業者に工事のやり直しを求めたが、なかなか応じてもらえない」、「何度やり直してもらっても納得がいかず、リフォーム会社からこれ以上の手直しは有料になると言われた」・・・などです。
リフォーム会社に手直しを求めるためには、その不具合が瑕疵であると判断する必要があります。
「瑕疵がある」とは一般的に、契約通りの内容でない場合(予定していた性能を満たしていない場合)や、建築基準法などの法律に違反する場合、公的な工事仕様書等の標準的技術基準を満たしていない場合などをいいます。
雨漏りや柱・壁・床などの傾き、構造躯体の不具合などであれば、瑕疵に該当するかどうかが明らかなので判断しやすいのですが、仕上げに関するクレームの場合は瑕疵かどうかの判断が非常に難しくなります。
特にリフォームの場合には、建物の築年数や劣化状況、リフォームの契約内容(どの範囲まで下地処理や下地の補修を行うのか等)などが様々なので、使用上支障のない小さな不具合や美観上の問題点については建築主が手直しを要求しても、リフォーム会社が「許容範囲内」と判断して対応してもらえないケースがあります。
したがってこの様なケースでは、当事者間での話し合いで解決するのが困難なことが多く、専門家の客観的な判断が必要になることがあります。
そこで瑕疵かどうかの判断には、過去の裁判事例などを参考にするのが一般的です。
裁判で瑕疵に該当しないと判断された事例には
1.リフォーム工事後のクロスやドア枠などの傷で、施主が工事直後に補修工事を要求しなかったもの(工事中に付いた傷かどうかがわからないため)
2.外壁塗装工事後のクラックや凹凸(築年数が古い建物なので、小さなクラックや既存下地の凹凸が残ることはやむを得ない)
3.キッチンリフォーム終了後の工事を行っていない給水管からの漏水(施主は給水管まで交換するのが当然としてリフォーム会社の責任を追求したが、経年劣化であることを理由に瑕疵には該当しないと判断)
などです。
リフォーム会社に工事の是正や補修工事などを要求する際には、いつ伝えたのかが重要になるケースもあるので、電話などの口頭による伝達ではなく、書面やメールで伝え、きちんと記録しておく必要があります。
しかし瑕疵に該当するかどうかの判断ついては、リフォーム会社にも明確な判断基準があるわけではなく、ケースバイケースで対応していることがほとんどだと思います。
そのため、施主や担当者によって判断が異なることも珍しくありません。
安易に手直し工事を行うとその後も次々と補修を求められると思われてしまうと、頑なに拒否されてしまうので要注意です。
またリフォーム工事では、工事完成時に残代金の支払いを行うのが一般的ですが、残代金の支払いを巡って、施主とリフォーム会社のトラブルに発展することがあります。
「工事が完成していても手直し工事が残っているので、残代金の支払いはできない」と主張する施主に対して、「契約した工事は全て完了しているのだから、残代金を支払ってほしい」とするのがリフォーム会社の言い分です。
この点において裁判所は、「工事が予定された最後の工程まで一応終了したかどうかによって判断すべき」との見解を示しています。
すなわち、リフォーム工事後にクロスの剥がれやフローリングの傷などの多数の手直し工事が残っていても、リフォーム会社が残代金を請求することは可能で、施主には残代金の支払い義務があるとしています。
このように、リフォーム工事が完成したかどうかは瑕疵の有無とは関係なく判断されるので、注意が必要です。
瑕疵の部分について残代金と相殺する(手直し工事に必要な費用を減額して代金を支払う)などして、一旦残代金を支払っておいた方が無難です。
(話がこじれた時に、延滞金を請求される可能性があります)
また、第三者の客観的な判断でも許容範囲内ということであれば、ずさんで粗雑な工事だと感じても工事が完了さえしていれば残代金を支払わざるを得ないこともあります。
この様なトラブルは、誰もができるだけ回避したいと思うものです。
そのためにも、リフォーム会社選びはくれぐれも慎重に行う様にしてください。