リフォーム前住宅診断のすすめ

「イメージと違う」、「仕上がりが悪い」、「不具合が改善されていない」・・・
住宅リフォームに関するクレームが増えている様です。
住宅リフォーム・紛争処理支援センターがまとめた「住宅相談統計年報2019」によると2018年度のリフォームに関する相談件数は901件だったそうですが、これは氷山の一角に過ぎません。
それ以外のリフォームに関するトラブル件数を含めると、年間でかなりの数になると思われます。

実際に弊社にも、昨年は住宅リフォームに関する「工事に不具合があるので見て欲しい」、「追加工事が妥当な金額なのかどうかをチェックして欲しい」などといった相談が多数ありました。

私も以前30年以上住宅会社に勤務していて、最初の15年ほどは注文住宅や賃貸マンション、官庁工事の現場監督として従事していましたが、後半の20年は住宅リフォームの仕事に携わっていました。

新築工事とリフォーム工事の両方を経験しましたが、工事の難易度からいえばリフォーム工事の方が数段高いと思っています。

リフォームの難しさは何と言っても「見えない箇所の状況によって工事内容や工事費が大幅に変わる中で、的確な提案と正確な見積もりが要求されること」です。
住宅リフォームでは、現在の状態を正確に把握できない段階でも、不具合の対処を含めた改修方法の提案や工事費用を顧客に対して示さなければなりません。

また新築工事と比較して短い工期の中では、万が一着工後に予期せぬ事態が発生した場合でも、現場で臨機応変かつ迅速に対応しなければなりません。
さらに顧客が抱えている本質的な問題を把握できないままに工事を進めると、後で大きなクレームに発展しかねないという難しさもあります。

その様なリスクを避けるために、リフォーム会社は事前に現況調査や顧客へのヒアリングを行いますが非破壊で行う現況調査には限界があり、顧客へのヒアリングスキルを身に付けるためにもある程度の現場経験が必要です。
またリフォームの現況調査は、単に不具合の有無を確認するだけのために行なうものではありません。
見えない部分の経年劣化具合やその範囲、不具合の原因などを探って最適な改修方法を考えるために必要になるものです。
したがって一般的なホームインスペクションよりも一段階上のレベルのスキルが必要になります。
そんな中で正確な見積書を作成し、顧客の納得がいくようなプレゼンテーションが求められます。

しかし構造体に不具合がある恐れがあったり、改修の影響が下地や構造体など広範囲に及ぶ可能性がある場合には費用が高額になるので、見積書への記載を躊躇してしまうこともあります。

あらかじめリスクを見込んで見積書を作成してしまうと当然見積金額が高額になるので、顧客の予算を大幅にオーバーしてしまったり、他社との相見積もりに負けて失注してしまったりする恐れがあるためです。

その結果リフォーム会社が少しでもコストを抑えて見積書を作成しようとしたり、工事着工後に追加費用が発生するリスクがあることの説明を怠ったりすると、トラブルの発生リスクが一段と高くなってしまうのです。
たとえば工事着工後にリフォーム会社から下地材や構造躯体の改修を提案されたり、補修範囲が予想以上に拡大したりすることを告げられると、顧客のリフォーム会社への不信感につながります。

こうした住宅リフォームに関するトラブルのリスクを最小限に抑えるためには、リフォームに精通した第三者による「リフォーム前住宅診断」が必要だと弊社では考えています。

現況調査により建物の状態や不具合の程度などを正しく判断し、補修工事が必要になる可能性が高い箇所やリフォームに併せて改修しておいた方が良い箇所、見栄えを良くするために多少費用がかかっても手を加えておいた方が良い箇所など、工事の受注を目的としない第三者だから提案できることがリフォームにはたくさんあるからです。

住宅リフォームではリフォーム会社に落ち度がなくてもトラブルになるケースが多い

一方住宅リフォームでは、リフォーム会社にこれといった落ち度がないのにトラブルになるケースもあります。
ほとんどの原因は、顧客とリフォーム会社の温度差にあります。
仕上がりのイメージや性能面での顧客の要求水準と、コストを重視するあまりに顧客の本音を把握できなかったリフォーム会社とのギャップが主な要因です。

「予算の範囲でリフォームしたい」、「金額はできるだけ安く抑えたい」というのはどんな顧客でも思うことですが、だからといって仕上がりに対するイメージは人それぞれです。
コストを抑えるために既存の下地を活かすのか、見栄えを良くするために下地から作り直すのか、など顧客によって提案のしかたを変えなければいけません。
「顧客が何を重視しているのか?」・・・そこのさじ加減がリフォームの提案では非常に重要になります。

zouk03[1]

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