3月に入り、住宅・リフォーム業界は1年のうちで最も繁忙期を迎えていることとと思います。
しかし今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、住宅設備機器や建築資材の納期遅れが発生しています。
すでに国内の複数のメーカーが、サプライヤーからの部品の供給遅延により一部商品の受注停止や納期遅延を発表しています。
これに伴い住宅・リフォームの現場では、工期遅延、工事ストップ、着工の遅れなどが発生している様で、今後状況はますます深刻化しそうなので心配です。
さらに現場で作業時間の制限や、職人の入場規制措置などの対応を行えば、更に工程に遅れが生じてしまうのは確実です。
これとは若干事情が異なりますが私が住宅会社に勤務していた数年前には、2~3月にかけて関東地方を襲った大雪のために多数の住設メーカーの工場や倉庫、配送センターが雪害被害を受け、商品の出荷ができなくなったことがありました。
当然現場が混乱し、工期遅れの現場が多数発生しました。
3月という時節柄、入学や進学、就職、転勤などを控えたお施主様が多く、この時期の工期遅れは不可抗力といっても簡単に許されるものではありませんでした。
また、補助金を受けて行う工事の場合には、工期遅延は絶対に許されないでしょう。
一方、建築会社にとっても3月末は決算期にあたるケースが多いので、工期遅れは決算にも大きな影響を及ぼします。
建設業では、引き渡しが終わらなければその年度内の売り上げに計上することができないためです。
一般的に、住宅会社の粗利益率は注文住宅で25~30%、リフォームで30~35%と言われていますが、営業利益率ではわずか5%程度に過ぎず、1~2%程度の会社も多数存在しています。
完工現場が多いこの時期での工期遅れは、住宅会社の業績の上で致命的なものになりかねないのです。
したがってこの時期の工期遅れは、お施主様にとって許されないものであるのと同じくらいに住宅会社にとっても許されないものです。
工期の大幅な遅れが売り上げの減少につながれば、財務体質がぜい弱な中小企業の場合には資金繰りにも影響し、最悪倒産してしまうことにもなりかねません。
工期を変更する場合には「工期変更の合意書」の取り交わしを忘れずに!
一方ではただでさえ通常月以上に業務量が多い上に、無理やり工期内に完成させようとすれば、品質面で悪影響を及ぼす恐れがあります。
十分な品質管理が行われず、施工ミスや手抜き工事が行われる可能性が高くなるので注意が必要です。
工期を延長することが許されるのであれば、建築会社に対して無理に工期内に完成させることを強要せずに、柔軟に対応することが大切だと思います。
ただし工期を延長する場合であっても今回の事態は不可抗力と考えられるので、「住宅会社の責めに帰すべき事由」はなく、住宅会社に対して遅延損害金の請求はできないものと思われます。
また、工期を変更する場合には後々のトラブルを避けるために、住宅会社と必ず「工期変更の合意書」を書面で取り交わしておくことが必要です。