建設業でも緊急事態宣言後にテレワークを採用する企業が増えている様ですが、実施率は23.3%となっていて他の業種と比べて非常に低くなっています。
一方住宅業界では対面での打ち合わせを避けて、設計打ち合わせをインターネット上で行うことを希望する建築主が増えているとのことです。
コロナウイルスの感染拡大はいつかは必ず終息に向かうと思いますが、終息した後の建設需要の低下が心配です。
今はどの業界においてもとにかく耐える時期ですが、ただ耐えるだけではだめで、新しい手法で稼ぐ手立てを考える必要があります。
また普段は業務に追われてなかなかできない改正民法の理解や新しい建築技術の情報を得る良い機会でもあります。
比較的時間に余裕がある今のうちにできることをしっかりと行っておきたいと思います。
ところで、近年の前例のない自然災害による木造住宅の被害を防止するために、住宅メーカーによる実証実験が盛んに行われる様になりました。
実物大サイズの試験体を使ったアキュラホームの「耐風実験」や一条工務店の「耐水害住宅実証実験」などの様子をテレビのニュースや新聞、雑誌などでご覧になった方も多いと思います。
いずれも「一般仕様」の住宅と、住宅メーカーが独自に開発した仕様の住宅との防災性能を比較するものですが、大きな性能差があることが一目瞭然です。
そしていずれの住宅メーカーもこれらの防災対策を年内には自社の仕様などに反映したり、商品化したりする予定の様です。
昨年関東地方を度々襲った大型台風やゲリラ豪雨などは近年では特別な災害とはいえず、今後何度も襲来する可能性があります。
したがって、もはや建築基準法で定められた性能だけでは決して十分とはいえません。
住宅購入の際には、耐震性と共に耐風性や水害に対する性能に関しても軽視できなくなるでしょう。
一条工務店の耐水害住宅実証実験の様子
建物周囲の水位が1m以上になっても、建物内に床上浸水や排水管からの逆流などの変化は見られない
確認検査機関の検査を受けていれば安心?
さて本題です。
建築基準法に基づいて建築確認や検査を実施する民間の確認検査機関に対する業務停止処分などが行われるケースが増えている様です。
民間確認検査機関と住宅会社、建築設計事務所との癒着問題は以前から指摘されていましたが、今年2月に業務停止命令が下された事例(昨年9月に発覚)も特定の住宅会社から金銭を受け取って確認検査の申請書類を代筆したり、特定の住宅会社の審査を優先して通す様に便宜を図っていたとのことです。
そして本来なら1週間ほど必要な審査を即日で通すなど、必要なチェックを行っていないと思われます。
近年では、建築確認や検査は主に民間の確認検査機関が行うケースが多くなりました。
そしてどこの確認検査機関で確認検査を実施するのかは住宅会社が決めるのが一般的で、実際に費用を負担する施主が決めることはほとんどありません。
したがって、検査機関からすると住宅会社がお得意様であり、便宜を図ることによって次回以降も依頼してもらえるといった構図が出来上がっています。
そして設計図書や施工の不備を検査などで厳しく指摘すると、2度と依頼してもらえないといったことも起こり得るのです。
小規模な民間確認検査機関にとっては、大口の取引先(大手ハウスメーカー、パワービルダー等)からの依頼が無くなってしまえばそれこそ死活問題になります。
お客様である住宅会社の図面や施工の不備を厳しく指摘するのは簡単なことではないでしょう。
こうした事情があることを多くの施主は知りません。
したがって建築確認や完了検査を受けて、確認済証や検査済証が発行されていれば安心と思われがちなのですが、それは間違いです。
また、完了検査の内容は非常に限定的で、床下や天井裏をチェックすることもありません。
欠陥住宅をつかまされることがないようにするためにはこの様な事情を理解して、第三者に検査を依頼するなど自分で対策を講じる必要があります。
住宅会社や不動産会社の営業マンが良く言う「役所の完了検査を受けているので安心です」という言葉を決して過信してはいけません。
完了検査を行って検査済証の交付を受けていれば絶対に安心だということはなく、こうした言葉を良く使う住宅会社や不動産会社の営業マンは、本人がこの様な事情を知らないのか、会社からそのように説明する様に教えられているかのいずれかなので注意が必要です。