昨日の読売新聞朝刊で、ホームインスペクションが紹介されていました。
まだまだ世間での認知度が決して高いとはいえないホームインスペクションですが、利用者の「生の声」が伝わる事で、利用価値が高まる事を期待したいと思います。
熊本県地震の被害状況調査のレポートが届きました。
調査は、2度の震度7の地震動を受けた熊本県益城町を中心に行われたものです。
調査報告書によると、1981年以前に建てられた旧耐震基準の建物では、ほとんどが倒壊など全壊相当の被害を受けたとの事です。
また、耐力壁の量が見直された1981~2000年までに建てられた新耐震基準の建物も、多くの住宅で倒壊を含め、全壊あるいは半壊相当の被害が確認されたといいます。壁量は十分でも、壁のバランスや柱と横架材(土台や梁など)の緊結強度に問題があった可能性が高いです。
そして、耐力壁の配置規定や継手・仕口の仕様が明確に定められた現行の耐震規定である2000年以降の建物にも、一部に倒壊の被害があった(最大17棟)と報告されていて、中には耐震等級2の住宅の倒壊もあった様です。
現行の耐震基準で建てられた住宅倒壊の原因
なぜ、現行の耐震基準で建てられた建物が倒壊してしまったのでしょうか?
報告書では、建築基準法で規定されていないバルコニーはねだし部分の考慮不足や、柱や壁の上下階での直下率の低さ(間くずれ)、筋違いの向きに偏りがあった可能性等を指摘しています。
また、耐震要素が適切に設計・施工されていなかった可能性(設計ミス、施工ミス)もあるといいます。
・構造用合板耐力壁を施工困難な位置に設計
・筋違い端部の金物の取り付け不良(漏れ)
・たすき掛け筋違いに切り欠き
等です。どれもホームインスペクションを行っていると度々見かける事例で、決して珍しいものではありません。
日本木造住宅耐震補強事業者共同組合(木耐協)のデータによると、耐震診断評点※の平均値は、1981年以前の建物で0.4~0.5未満、1981年~2000年までの建物で0.5~0.6程度です。
※耐震診断評点1.0が、国や自治体が一応安全としているものです。また、評点が0.4の場合、震度6弱で倒壊する可能性があるとの報告もあります。
しかし、評点が1.0でも、震度6弱で中破、震度6強で大破、震度7で倒壊とする研究結果もあるようなので、決して安心ではありません。
今回の様に大規模の地震動が複数回発生したり、設計ミスや施工不良があるのは、もはや特殊なケースと思わない事が必要でしょう。
今後住宅を設計する上では、耐震性能に余裕を持った耐震等級3(建築基準法の1.5倍の強度)を目標に設計する事が求められると思います。