リフォーム工事途中で業者が仕事を放棄した!

新型コロナウイルス感染拡大の影響が大手ゼネコンの建設現場をはじめとして、大手ハウスメーカーの工事中断など住宅業界にも着実に広がっています。
特に元々キャッシュフローに余裕がない中小の工務店、リフォーム会社にとっては、現場が止まって工期が大幅に遅延することになると、当面の資金繰りさえおぼつかなくなってしまう恐れがあります。
今後の事業計画を改めて見直すきっかけとして前向きに捉えられたら・・・と思っていますが、長期化すると大変な状況になってしまう恐れがあります。
事態がこれ以上深刻にならないことを祈るしかありません。

さて、先日都内でリノベーション工事中のお施主様から、「工事途中で職人が仕事を放棄して現場に来なくなってしまった。工事請負契約を解除したいと思うが工事代金の過払いがあるため、業者に返金を要求するための出来高査定と工事の不具合調査を行って欲しい」、「そして施工業者が過払い金の返金に応じない場合には訴訟になる恐れがあるので、そのための資料になるものを作成して欲しい」とのご依頼を受けました。

同様なトラブルは毎年数多く発生している様で、インターネットで検索するとたくさんの事例が出ています。
そしてその中には多くの共通点があることがわかります。(一部例外あり)
・請負者は大工などの個人事業主であることが多く、建設業の許可を取得していない
・契約時の見積内容が不明確(数量が「一式」表示で、明細書がない)
・工事途中で度々工事代金の前払いを要求され、そのたびに応じてしまった
 (お金が回っていないため、前払い金を受け取らないと材料の購入や下請業者に工事の発注ができない)
・工期に関する取り決めが曖昧
などです。

今回ご相談を受けたケースもこれらの全てに該当していて、正に典型的なトラブル事例といえるものでした。
リフォーム工事では、細目のない一式見積や現場をろくに確認しないで作成した見積書など、安易な見積もりで金額を取り決めて工事に着手してしまうことが少なくありません。
さらに着工前に工事代金の全部(少額リフォームの場合)または前金での支払いを求められることも珍しくない様です。

そして今回の物件は、リノベーションの内容が非常に大がかりなもの(ここでは詳しくは説明できませんが、1,000万円を大きく超えるリノベーションです)なのにもかかわらず、請負者には建設業の許可がありませんでした。
また予定の工期も大幅に遅延していて、昨年の12月に完成する予定だったものがまだ半分程度しか終わっていないとの事です(工事着工は昨年の9月)。

ここで最大の問題になるのは、リフォーム工事請負契約を解除した場合にすでに支払い済みの代金が返ってくるかどうかです。
全額返金を求めるのは難しいとしても、過払いがあった場合には施工していない部分の返金を求めるのは当然のことです。
そのために出来高を算定する必要があるのですが、元々の見積書の算定根拠が不明瞭であったり、金額が相場からかけ離れていたりする場合には、双方が納得して合意することが極めて難しくなることが予想されます。
特に極端に安い金額で契約した場合には、要注意です。
また今回の様なケースでは相手に責任を取る能力がない可能性が高いので、交渉が難航する恐れがあります。

さらに工事を完成させるためには引継ぎ業者を探さなければなりませんが、既に支払った過払い分のお金が返金されなければ、予定していた予算を大幅にオーバーしてしまうことになってしまいます。

リフォーム工事のリスクをできるだけ抑えるためには?

この様なリスクを避けるためには、リフォームの契約時には以下の点に注意する必要があります。

・契約書には、金額の算定根拠が明確になる様に数量と単価を明記した見積明細書を添付する
・契約書には支払い条件と工期を明記し、支払い時期は工事の出来高を考慮してできるだけ前払いを避ける
・500万円を超えるリフォーム工事の場合には、必ず建設業の許可業者に依頼する
 (建設業の許可要件では、ある程度安定的に事業を経営していることが求められ、直前の事業年度における決算書で判断されるので、お金が回らないなどのリスクが軽減できます)
この一見当たり前の様に思われることが実際にはできていないケースが多いのです。

契約後にリフォーム会社とトラブルになった場合には、問題解決までに多くの時間と労力がかかります。
トラブルを回避するためには、トラブルになりそうな業者を事前に察知し、この様な業者と契約しないことが最も確実な方法です。
特に、親の代からつきあいのある業者、知人から紹介された業者などの場合には、ついつい曖昧な内容で契約してしまうことが多く、トラブル発生のリスクが一段と高くなる傾向があります。

これらの注意点は過去に何度もこのコラムでご紹介してきたことですが、リフォーム工事の契約で最も重要なことなのでくれぐれもご注意ください。

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