新型コロナウイルスの流行による影響が国内の住宅産業にも少しづつ影響を及ぼしています。
中国での感染拡大により、TOTO、LIXILなどの大手住宅設備機器メーカーの現地サプライヤーからの部材供給が遅れ、生産に影響を与えている様です。
結果として一部のシステムキッチンやレンジフード、便器などが新規受注の停止を余儀なくされているといいます。
現在、国内のほとんどの住設メーカーが生産コストが安い中国やベトナムなどの海外に生産拠点を持っているため、この影響は今後しばらく続きそうです。
さて、中古住宅のホームインスペクションを行っていると時々遭遇するシロアリによる食害被害。
シロアリ被害は古い住宅ほど発生頻度が高く、シロアリの存在は床下を点検すると蟻道(シロアリが土や排泄物などで作る通り道のこと)が見つかることで比較的容易に発見することができます。
一般的にはベタ基礎が普及する前の住宅がシロアリ被害にあうことが多く、実際に弊社で蟻害を発見した事例もそのほとんどが床下に土が露出している築年数が20年以上の布基礎の住宅でした。
古い住宅は床高が低いので床下に湿気が籠りやすいのに加え、換気や通風が良くないため、シロアリにとって良い環境になります。
当時の住宅では薬剤による土壌処理を行うことでシロアリ対策をしていましたが、次第に薬剤の効果が弱まるため、築年数が経過すると浴室やキッチンなどの水回りで蟻害が発生することが多くなります。
しかし2001年の品確法の告示で、ベタ基礎を採用すれば土壌処理を省略できる様になってからは、床下全面を鉄筋コンクリートの底盤で覆うベタ基礎が急速に普及し、土壌処理は省略される様になりました。
事実弊社がインスペクションを行ったものの中では、ベタ基礎でシロアリの食害を受けていたのはごく稀なケースしかありません。
結論は、ベタ基礎でもシロアリ被害を受けることがある!
しかし先日ある住宅の専門誌を見ていて、ベタ基礎を採用した住宅のシロアリ被害が増えている事を知りました。
ベタ基礎は床下が厚いコンクリートの底盤で覆われているので、通常はここからシロアリが侵入することはありませんが、土を入れてかさ上げした玄関、勝手口のタタキ廻りや、セパレーター(コンクリートを打設する際の基礎の立ち上がり型枠を固定するための金物)の貫通孔、配管貫通部の隙間、基礎立ち上がりの水抜き穴、コンクリートの打ち継ぎ部分、クラックなどから侵入するケースが多いといいます。
基礎の立ち上がりの水抜き穴や、配管貫通部の周囲の隙間は、本来は工事中に埋められるべきものですが、中には埋め忘れや隙間が残っていることがあるので、今後インスペクションを行う際には注意して確認する必要がありそうです。
また基礎断熱工法を採用した住宅で外張りの場合には、断熱材が直接土壌と接するためシロアリの侵入経路になりやすくなってしまいます。
その他では床下の断熱に発泡ウレタン吹き付け工法を採用した住宅もシロアリ被害を受けやすいといいます。
この場合には、よほど注意深く確認しないと蟻道を見つけるのが難しいと思います。
床下の断熱に発泡ウレタン工法を採用した住宅は近年良く見かけるので、今後注意する必要がありそうです。
ベタ基礎であっても、1ミリ前後の隙間があればシロアリの侵入を防ぐことはできません。
今後はベタ基礎だからと油断せずに床下調査を行う必要性を実感しています。
ベタ基礎立ち上がり部分の配管貫通部のほんのわずかな隙間からシロアリが侵入したと思われる事例
基礎が断熱施工されているとこの様な蟻道を見つけるのが難しくなる