ADRという紛争解決手段

現在、大手建設会社を中心に、建築現場での単一作業の効率化や省力化を狙って、ロボットを導入してその効果を検証する事例が増えているといいます。
将来的には、現場作業にとどまらず、建物調査や検査などにもロボットが導入される事になりそうです。
ロボットとAI(人工知能)の組み合わせで、長年にわたって生産性の改善が進まなかった建設業界が大きく変わるかもしれません。

さて、私は3年前まで住宅会社のリフォーム部門で約20年間、事業責任者をしていました。
年間約1000件以上のリフォーム工事を行う中では、お客様からクレームを受けたり、トラブルになる事も皆無ではありませんでした。
設計ミスや施工ミス、伝達ミス、職人のマナー不足、お客様との意思疎通が不足していた事による行き違いなどが主な原因です。

建築工事が人の手により行われるものである限り、こうしたトラブルが発生する可能性を常に抱えています。
しかし20年の間に、訴訟沙汰にまで発展する様な事が1件もなかった事が幸いだったと思っています。

そして現在、建物調査の仕事を行っている上でも、このような建築トラブルに出会う事も少なくありません。
中には、施工業者との裁判を前提とした資料作成のための調査を依頼されたり、悪徳リフォーム会社との交渉を依頼される事もあります。

相手との交渉が上手く進まない中で、自分の正当性を全面的に主張し、白黒をはっきりさせたい場合には、裁判で解決するしかありません。
しかし裁判には時間も費用もかかり、時には他人に知られたくない事まで公開しなければならない場合もあります。
そして自分の希望通りになるとも限りません。

裁判によらない紛争解決の手法

そんな中で、近年ではADR(裁判外紛争解決制度)による紛争解決が注目されている様です。
ADRとは、一言でいえば裁判手続きによらずに紛争を解決する手法で、一般的には「和解」「調停」「仲裁」といった形で解決する事をいいます。
そして裁判と違って「非公開」です。
裁判の様に強権的に紛争を解決する事はできませんが、裁判に比べて簡易・低廉・柔軟に紛争を解決できるのがメリットです。

先日、ADRによる紛争解決の調停人資格を得るための講習を受講してきました。
この講習を受講し、提出したレポートが一定水準を超えていると認められれば、「不動産の施工」に関する調停人候補者名簿に登録する事が可能になります。
講習を受けた事で、すぐに建築トラブルの調停ができるとは到底思えませんが、少なくとも問題を解決の方向に導くための心構えや立ち位置、コミュニケーション手法など、今後の業務に参考になる事がたくさんありました。

人は誰もが好んでトラブルを引き起こしたいと思っている訳ではないはずです。
それは、一部の悪意ある業者を除けば、建築トラブルの場合も同じです。
トラブルが発生するとつい熱くなって、相手の過ちを一方的に非難しがちですが、万一建築トラブルに巻き込まれてしまった場合には、当事者間の自由な意思と努力に基づいて紛争の解決を目指す「ADR」という選択肢も是非検討して欲しいと思います。

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