ホームインスペクションを取り巻く議論

来年4月に予定されている改正宅地建物取引業法の施行にともなう「ホームインスペクションの役割」について、私が所属する日本ホームインスペクターズ協会内部でも現在様々な議論が行われています。

既に国土交通省からインスペクションの指針が発表されていますが、「本当にそれで依頼者の方(主に中古住宅の買主様)にメリットがあるのか?」という内容の議論です。

今回の宅建業法改正は国の偉い人達が決めた事なので私が異論をはさむつもりは毛頭ないのですが、どうしても依頼者のメリットが感じられない様に思います。

そもそもインスペクションを行うのが買主が自ら探したインスペクターではなく、仲介業者が斡旋したインスペクター(今後仲介業務を円滑に進めるため、仲介業者が検査会社を子会社化する事も予想されます)では売買に不利になる報告をありのままにしてくれるのでしょうか。
普通に考えればそんなことはないでしょう。
インスペクターは買主が直接依頼して初めて意味があるのです!
また斡旋するインスペクターが建築士に限定されるのも問題がありそうです。

ホームインスペクションは「建物を調査診断して現況を報告するだけでは目的の半分に過ぎない」というのが私の持論です。
築年数の経った中古住宅には不具合があるのが当たり前で、それを「いかにコストを抑えて修繕するか」、
「リフォームに併せて効果的に改善する方法はないか」、「この先修繕費用がいつ、どの位かかるのか」等の助言ができなければあまり意味がありません。
そのような助言ができるのが建築士がベストだとは到底思えないためです。

もっとも消費者が「ホームインスペクションの価値をどこに置くのか?」が重要なのであって、不動産の価格査定にまで及ぶものとするなら、不動産の専門家がベストと言えなくもないと思うのですが。
要はホームインスペクションを依頼する人の目的次第です。

もう一つのホームインスペクション

今回の改正は瑕疵保険への加入可否の判断を行い、国で推進する保険加入を促進する狙いがあると思われますが、保険に加入できれば安心という事も決してありません。
保険が適用されるのは雨漏りや建物が傾いているなどの大きな瑕疵だけです。

また、宅建業者がインスペクションについて媒介契約時に説明を行い、実施の有無を確認すると言っても、全ては仲介担当者のさじ加減でどうにでもなってしまいそうです。
今までホームインスペクションの事を全く知らなかった人が、インスペクションの価値を見出して実施するにはその場の簡単な説明では難しいでしょう。

今後国内の中古住宅の取引が安心して行える様になるためには、国で推進するホームインスペクションとは別の視点から考えなければいけないと思います。
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消費者が求めるホームインスペクションとは?

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