古民家を取り巻く状況が大きく変わる

先週末、全国古民家再生協会の全国大会に出席させていただきました。
古民家再生協会は、「持続可能な循環型建築」を世の中のスタンダードにする事を基本理念として様々な活動を行って
いる団体です。
古民家のインスペクション、再築をはじめ、最近では大工棟梁の育成、ハンドプレカットなども推進しています。
古民家は主に我が国に古くから伝わる伝統構法で建てられているのですが、現在は建築基準法の適用外とされています。
また、この構法に長けた工務店、建設会社はあまりありません。
そのため古民家を再利用するには、今までは在来工法に改造して建築基準法に適合させるか、解体して建て替えを行うしか
ありませんでした。
私も以前の勤務先では、在来工法の基準に合わせて耐震補強を行っていました。
ハウスメーカーやパワービルダーなどに相談すると、ほぼ100%建て替えを奨められてしまいます。
古民家を再生できる技術がないためです。
また伝統構法のままでは、安全性を証明する技術的基準もありませんでした。
しかし協会では、安心して伝統構法に住み続けていける様に再築基準を作成し、この度リフォームかし保険や地震保険、火災保険にも加入できる様になるとの事です。
地震保険、火災保険には古民家鑑定(インスペクション)をもとに、固定資産税の評価とは別の評価額を算出するといいます。従来は築50年以上経過している古民家は、全く価値のないものとされていたので大きな変化です。
古民家のインスペクションの方法は既に確立しているため、現在古民家を所有している方、古民家に住みたいと思っている方には朗報です。

古民家は現在の住宅よりも劣っているのか?

古民家再生協会
私は、もともと日本の伝統構法で建てられた家が、現在の木造住宅よりも劣っている事はないと思っています。
日本の伝統的な住宅は、雨漏りしないように窓には庇や霧除けを付けたり、軒が出ていたりといろいろな配慮がされていま
した。
床下が高く、基礎で仕切られていないため常に風通しが良く、湿気による木の腐食を防ぐ事ができます。
また、地震の際の外力からの変形に対しては、構造自体が復元力を発揮して対抗するという考え方で、筋交いや金物で固める在来工法の耐震の考え方とは全く異なります。
木材の継手や仕口(接合部分)が木のめりこみによって少しづつ動く事で地震の力を逃がすのが伝統構法の考え方です。
よって古民家の接合部分には釘や金物はほとんど使われていません。我が国独自の素晴らしい技術です。
この様に伝統構法で建てられた住宅建築には、様々な工夫が建築の意匠の中に体系化されているので、大工がそれを継承
して建てるだけで欠陥の少ない家になりました。
先人達が長い年月をかけて得た知恵が全て活かされているのです。

一方、現在の住宅は外観だけでも軒がない家や庇のない家、陸屋根の家、屋根上バルコニー、内樋の家など多種多様で、どこもデザイン優先の傾向ですが、個々の設計士に細部の納まりなどのスキルがなければ雨漏り等の欠陥は避けられません。
また、建物の耐震性も釘やビスの間隔や金物頼りのため、工事中の検査で不具合を発見できなければ完成してしまうと欠陥住宅でもわかりません。

今回、伝統構法の再築が公に認められる様になった背景には、技術的な検証だけでなく、行政への働きかけや広報活動
などの地道な努力があった事と思います。

古民家を取り巻く環境は大きく変わりそうです。
我が国の住文化である古民家が、今後数多く再生される様になる事を願いたいと思います。

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