基礎のひび割れについて

構造耐力上主要な部分である基礎に不具合があると、建物の強度や耐久性に大きな影響を及ぼします。
近年では、あらかじめ工場で溶接加工を行ったユニット鉄筋の採用や、配筋検査の厳格化などによって、住宅の基礎配筋の精度は以前と比較してだいぶ向上している様に思います。
しかし木造住宅基礎のコンクリートの品質管理は、鉄筋コンクリート構造建築物ほど厳しくありません。

建築物の耐用年数の上でも、鉄筋コンクリート造と木造住宅とでは大きな開きがあるので、現場で全く同じ品質管理を行うには無理があるのですが、木造住宅の現場ではコンクリートの手配や現場での打ち込み作業は基礎業者任せとなっているケースがほとんどです。
木造住宅基礎のコンクリートの品質管理は十分ではないと思ってよいでしょう。

そして出来上がった住宅の基礎にひび割れを発見すると、不安に思う方が多いでしょう。
建物を支える基礎に、目に見える不具合があるとなれば当然だと思います。
基礎に大きな不具合がある場合には、後からの対策は容易ではありません。
しかし、ひび割れにもいろいろな種類があり、その原因や対処の仕方も様々です。

基礎にひび割れを発見した場合には、➀ひび割れの幅、➁ひびの数、量、➂ひび割れの方向を確認します。
ただし基礎の表面はコンクリート打ち放しの場合と、モルタルなどの仕上げ材がある場合とがあり、モルタル塗りの場合には、ひび割れがコンクリート面まで達しているかどうかを確認する必要があります。
また、ひび割れの幅は目で見ただけではわからないので、クラックスケールをあてて計測します。
クラックスケールはホームセンターなどで数百円で購入できるので、自分で計測する事も可能です。

幅0.3mm未満のひび割れはヘアークラックと呼ばれ、原則として補修の必要はありません。
建物の耐震性にもほとんど影響ないと思います。
乾燥収縮や気温の変化などによって小さなひびが入るのは、コンクリートの性質上避けられません。
しかしその数が多い場合(1mの範囲に3つ以上が目安)には、施工上の問題や地盤に問題がある疑いがあります。

0.3mm以上0.5mm未満のものは、補修が望ましいひび割れです。
放置しておくとひび割れ部分から雨水の侵入や炭酸ガスが侵入し、劣化が進行する恐れがあります。

そして幅0.5mm以上のひび割れがある場合には、放置するとコンクリート躯体の劣化を促進させる恐れがあるので、早急な補修が必要です。
また、0.5mm以上のひび割れが複数見られる場合には、地盤やコンクリートの品質、配筋などの面で何らかの問題が潜んでいる可能性が高いといえます。

ひび割れの方向にも注意!

ひび割れの幅と共に、ひび割れが発生している位置やひび割れの方向も重要なチェックポイントです。
床下換気口などの開口部廻りは特にひび割れが発生しやすい部分です。
鉄筋の開口補強が十分に行われていないと発生します。
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床下換気口廻りのひび割れの幅をクラックスケールで計測しているところ

基礎の縦方向に発生するひび割れは、一般的によく見かけるものです。
乾燥や温度変化によって生じるもので、そのほとんどが構造に影響を与える事が少ないヘアークラックですが、幅の広いひび割れや基礎の下から上まで伸びているものには注意が必要です。
基礎の立ち上がり部の上部から垂直に入るひび割れで、上部のひび割れ幅が広く、下部に進むにつれ幅が細くなっているのが典型的な収縮ひび割れです。
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基礎の天端まで伸びる幅の広いひび割れ

そして水平方向に伸びるひび割れには特に注意が必要です。
このようなひび割れがある場合には、基礎に大きな力が加わった可能性が高いと思われるからです。
また、基礎には元来この様な構造クラックが発生しない様な設計・施工が要求されているので、構造クラックが発生している場合には設計や施工に何らかの問題を抱えている可能性が高いのです。
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水平方向に伸びたひび割れ
水平方向のひび割れはコンクリートの乾燥収縮が原因でない可能性が高い

この様に基礎のひび割れを調べる事で、建物のコンディションや施工精度など多くの情報を得る事ができます。
特に中古住宅の購入を検討している場合には、重要なチェックポイントです。
基礎を貫通するひび割れが見られる場合には、購入を再検討する事も必要です。
自分でチェックして不安に思う様な事があれば、専門家に調査を依頼する事をお奨めします。
基礎の調査と併せて、建物の傾きなどをチェックする事によって、総合的な判断が可能になります。

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