中古住宅のインスペクションでは、現行の建築関連法規を満たしていない事例がたびたび見受けられます。
しかし、建築基準法は何度も改正されており、法規の変更に伴って建物の構造や仕様が現行法に適合しなくなったケースも少なくありません。
この様な建物は「違反建築」とはいわず、「既存不適格建築物」と呼びます。
日本ホームインスペクターズ協会のマニュアルによれば、ホームインスペクションの段階では建築関連規定への適法性の確認までは求めていませんが、これは建築された時期によって規定が異なるためです。現行の規定は満たしていなくても、建築当時の規定は満たしているものも少なくありません。
ホームインスペクションは目視で住宅のコンディションを把握して報告する仕事です。目に見える劣化事象や劣化の兆候、不具合などから建物の状態を把握し、不具合の状態によって見えない部分の施工精度や施工レベルまで推測する事ができます。
私は中古住宅のホームインスペクション時には、こういった事や現行法への適合性についてもできるだけアドバイスする様に心がけています。
そして不具合の中には、明らかに建築当時からの施工不良や欠陥と思われるものを目にする事もあります。
中古住宅にありがちな不具合
中古住宅で良く見かける不具合は、以前にも指摘した断熱施工の不具合の他、建築金物のナットの締め忘れ、接合金物の未使用、斜め材の不足、床束のぐらつき、雨仕舞の施工不良、配管等の外壁貫通部分の穴埋め不良などがあります。
そして2×4住宅に多いのが、耐力壁のビス間隔の不具合です。この不具合が数多く存在すると、大きな地震で建物が倒壊する可能性があります。通常壁が仕上がってしまうと目視では確認する事ができない部分ですが、ユニットバスの点検口から覗いて確認できる場合もあります。一部の壁で不具合が発見された場合には、他の部分にも同様の不具合がある可能性があります。もちろん完成している建物に対する非破壊検査の限界があるので、欠陥や不具合を漏れなく発見する事は不可能ですが、天井裏や床下の一部で欠陥が見つかった場合には、他にもあると考えるのが普通でしょう。
この様な事まで全て報告するかどうかは非常に悩ましいところなのですが、実際に確認できた事実はきちんと報告する様にしています。
築10年以上経過していても、ひび割れや不同沈下、雨漏り等の特に大きな不具合や劣化の事象が生じていなければ比較的安心できますが、施工精度や施工レベルがあまりにも低い建物は、将来大きな地震などがあった場合にはやはり心配です。購入するにあたっては慎重に検討し直すか、二次診断を行う事が必要です。