住宅の没個性化の影響

最近、建物診断を行っていて感じることがあります。
近年では、地元の工務店で建てた注文住宅も、パワービルダーやローコストビルダーで建てた住宅も、どれもみな似たようなものばかりになっています。
軒の出が少ない四角い家が多く、室内に使用される建材や建具などはどの家も大手建材メーカーの商品が大量に使用されています。

大手建材メーカーの商品は、安価で入手しやすく、工場生産なので品質も安定しています。
あらかじめカタログで確認することができ、必要であればショールームなどで現物を見ることができます。
住宅会社だけでなく建て主にも様々なメリットがあるのですが、小規模な工務店になるほど安く仕入れるのが難しいため、価格競争力が厳しくなってしまいます。

個々の建て主に合わせて材料を吟味し、良質の国産材の産地に出向いて林業家や木材加工業者とパートナーシップを結んで、木材にこだわった家づくりをするという工務店のイメージは、首都圏では過去の話になりました。
木材の調達も刻み(加工)も全てが材木屋、プレカット工場まかせになっています。
輸入材を使って、大壁にしてビニールクロスで仕上げる近年の住宅では、木材にこだわる必要などないので、当然の流れなのかもしれません。

一方、古民家と呼ばれる昔の住宅は、南側で育った木は南側に、北側の木は北側に使うなど、木の育った向きをそのままの状態で柱の向きにするのが良いとされたといいます。
大工さんが1本1本木目を見ながら、将来どちら側に反るのかを予想して、墨付けや刻みを行っていたのを思い出します。
こういった建て方は、大手ハウスメーカーやパワービルダーにはできません。

しかし現在は工務店が建てる注文住宅でも、柱や梁に集成材が使用されています。
建具の枠材や巾木、廻り縁などの造作材やフローリングにも無垢の木材を使用せず、安くて見栄えが良く初期クレームの少ない樹脂シート貼りの木質建材が使われます。

私がこの業界に入ってから5,6年くらい迄は、構造材も造作材も大工さんが作業場で手刻みで加工していましたが、今はそんな光景を見る事はほとんどなくなりました。

現在では極端な話、基礎と構造躯体が出来上がれば、あとは旧トステムとINAXを中心としたリクシルグループか、TOTO、大建工業、YKKAPのTDYグループの既製部材だけで住宅が1件建ってしまうほどです。

こうなると工務店は住宅資材メーカーの協力施工店の様なもので、大手プレハブメーカーの協力施工店とほとんど変わりありません。

また家のデザインも、どこで建ててもほぼ似たような家になります。
同じ様な家を繰り返し建てることで、設計図を作成する手間や職人に指示する手間が省けるのでコストダウンにつながり、施工する職人もミスが減るため、工務店にとってもとても好都合なのです。
しかしこれでは本来の工務店の強みを発揮する事はできません。

これからの小規模工務店・リフォーム会社が抱える問題

この傾向は住宅リフォームも同じです。
一昔前のリフォームでは、リフォームに特化した建材や商品などなかったので、現場で納まりを工夫しながら材料の調達や加工を行っていました。
リフォーム会社による出来栄えの差がはっきりと感じられました。
しかし現在はメーカーの既製品を取り付ければ簡単に済んでしまいます。
この結果多少の腕の差は生じたとしても、どこに依頼してもほとんど同じような出来栄えになります。

小規模の工務店、リフォーム会社は、専任の設計スタッフが置けないので、省エネ、耐震、防火など技術進歩が激しい分野では、法改正や新工法などの最新の情報に追従するのがもともと難しいという問題があります。
最新の技術基準で家を建てたりリフォームしようとする場合には、それなりの規模の会社に依頼した方が安心です。
従来の小規模工務店は、そのような弱点を他社にない独自の家づくりをセールスポイントにして補ってきました。

今後ますます住宅の個性がなくなってしまうと、中小の工務店やリフォーム会社が生き残るのは非常に難しくなっていきそうです。

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近年はどの住宅会社で建築、リフォームしても似たような仕上がりが多い

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