住宅会社の教育制度

すでに30年以上前の話ですが、私の以前の勤務先が当時ナショナル住宅産業(現在のパナホーム)の代理店をしていた関係で、現場監督だった私は入社1年目の8月に、社命によりナショナル住宅の研修に参加した事がありました。

場所は滋賀県の研修所だったと思うのですが、約2週間程の泊まり込みの研修だった様に記憶しています。
受講生は約30名程で、全国の代理店に勤務する若手現場担当者が集まっていました。
研修中は、日曜日以外は朝早くから夜まで研修所に缶詰状態で、一切の外出は許されず、接客マナーから建築知識まで徹底的に詰め込まれました。せっかく滋賀県まで行ったのに、研修施設外には一歩も出ることができません。毎朝起床すると同時に、支給された作業着に着替え、広い研修施設敷地内のジョギングと部屋の掃除から一日がスタートします。
まるで軍隊にでも入った様でした。
研修は、名刺交換の仕方に始まり、建築法規やナショナル住宅の部材の拾い出し、注文書の作成方法、施工マニュアルの学習や施工図の作成、積算演習など、毎日ヘトヘトになるまでの厳しい内容だった様に思います。

当時の私の会社は、まだ社員数100名足らずの小さな会社だったため(後に東証一部に上場するとは夢にも思いませんでした)、建築の研修などほとんどないまま入社早々から現場を担当させられていたので、「さすがに大手ハウスメーカーは違うなぁ」と驚いたものでした。
無事受講が終わると、ナショナル住宅の技術者証とプレハブ建築技術者証が交付され、一人前の技術者になった様な晴れやかな気分になったものです。

現在でも同じ様な研修があるのかどうかはわかりませんが、今でも建築技術者を目指す事になった原点として時々思い出します。
また、当時一緒に研修を受講した全国のメンバーの中には、今でも年賀状のやり取りをしている仲間もいます。

契約前に住宅会社に確認すべき事

「大手ハウスメーカーで建てる家が絶対に安心」とは言えませんが、こうした研修制度の充実度では大手ハウスメーカーにはとても太刀打ちできません。
現在では、現場監督や営業マンのみでなく、施工協力会社に入社した若者たちを、1年以上の期間をかけて「社員大工」として養成しているハウスメーカーもあります。
技術や専門スキルのみでなく、マナーや住宅会社としての使命まで指導するそうです。

この様な取り組みを行うためには、やはりそれなりのコストがかかるので、ローコスト系の住宅会社ではなかなか真似する事はできません。普通の住宅会社でも、建築主からコストダウンが厳しく要求される近年では、自社で大工や職人を育成して雇っている会社は多くありません。大工や職人の教育は下請け業者任せの住宅会社がほとんどです。

「品質向上を目指すために大工や職人にどの様な教育をしているのか?」住宅会社を選ぶ上で絶対に確認すべきポイントだと思います。
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