今までの国内のシロアリ被害といえば、湿度の高い床下の地面の中から上がってきて家屋の土台や柱を食べてしまうというものでした。
日本の代表的なヤマトシロアリやイエシロアリは適度な水分がないと生息できず、土の中に巣を作ります。
そして家屋の中を進むためには、乾燥から身を守るために蟻道と呼ばれるトンネルを木材の表面に作ってその中を食い進んでいくので、床下に蟻道を見つける事で比較的容易に発見する事ができました。
また、床下に防湿シートを敷く等床下を常に乾燥状態にする事で、シロアリ被害を予防できると考えられてきました。
ところが近年では、乾いた木材の中の僅かな水分でも生育できるシロアリの被害が増えています。
アメリカカンザイシロアリという外来種のシロアリです。木材や家具、ピアノなどの輸入によって国内に持ち込まれた
とされています。
アメリカカンザイシロアリは加害した木材の中に巣を作り、蟻道を作らないので容易に発見できません。
また、僅かな水分しか必要としないため、被害は床下や建物の下部だけでなく天井裏や小屋組みまで建物全体に及びます。
家屋の柱や梁など表面を薄く残して内部を食い荒らし、空洞化させてしまうので、放置しておくと建物倒壊の原因となる
恐ろしいシロアリです。
大きな被害を及ぼすアメリカカンザイシロアリ
私も以前、アメリカカンザイシロアリの被害にあった住宅のリフォームに関わった経験があります。
鉄骨ALC造の住宅でしたが、床下から壁の内部、天井裏まで被害は広範囲に及んでいました。
鉄骨造だったため、柱や梁などの主要構造部には被害はなく、2階まで被害が及ぶ事もなかったのが幸いでしたが、1階
部分についてはスケルトンリフォームを行わざるを得ませんでした。
木造住宅だったら柱を伝って2階部分や主要構造部にも大きな被害を受けていたと思われます。
また、アメリカカンザイシロアリの食害の進行は遅く、家屋に浸入してから被害の兆候が現れるのに数年かかるといわれています。被害範囲の拡大も地中経由でなく、飛翔によって拡大するとの事なので、早期発見が難しく、被害が広がりやすいのが特徴です。
万一、アメリカカンザイシロアリによる被害が発見されたとしても、被害がどこまで及んでいるのかがわかりにくく、駆除
方法も確立されていない様なので、大掛かりな工事が必要となる可能性が高いと思います。
私はホームインスペクションを行うにあたり、できる限り1階の天井裏も注意深く調査する様にしています。
通常ですと床下や雨漏れ跡が出やすい小屋裏は注意深く調査しても、1階の天井裏では梁や接合金物の状態を確認する
程度となるのですが、アメリカカンザイシロアリ被害の兆候があるかどうかを見るために軽視できません。
この他、糞などで気付く事もありますが、売買物件でアメリカカンザイシロアリの被害が見つかった場合には、慎重に購入の可否を検討して欲しいと思います。