床束の浮き

中古住宅のホームインスペクションで、住宅の外観に水染みやひび割れ、天井に水染み跡などが見つかると、隠れた構造部分も相当傷んでいるはず。
そんな従来の常識が、現実は必ずしもそうでないことが最新の研究でわかったといいます。
(日経ホームビルダー6月号より)

建築研究所の上席研究員が発表した論文によれば、外装材や内装材に水染みやひび割れが見つかったもののうち、内部の躯体に腐朽や蟻害などが発生していた割合は、わずか8.5%に過ぎなかったとのことです。
逆にトラブルに発展しやすい「外観に変化がなくても内部に変化があったケース」は1.6%だったとの事で、やはり基礎の高さが低いものや軒の出が短いほど発生確率が高くなるそうです。
今後インスペクションを行う上で、参考になるデーターです。

さて、ホームインスペクションの床下調査の話です。
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束石と床束の間に隙間が生じているため、木片で飼い木をして、隙間を埋めている例

中古住宅の床下空間の調査では、シロアリの食害や構造材の腐食、給排水管の漏水、基礎のひび割れ、床断熱材の欠落などの不具合が発見される事があります。
そして稀に、床束(ゆかづか)と呼ばれる床組みを支えている木材が、大きく浮いていることがあります。

本来床束は束石の上に載って大引きを支え、束石に荷重を伝えているものですが、束石から離れて宙に浮いた状態になっています。

床束が浮く原因はいくつかあるのですが、多くは束石の沈下です。
基礎工事で一度掘削した土を埋め戻す際には、転圧といって人為的に締固めを行いますが、それが不十分な場合には土が自重で締め固まって沈下します。
また、埋め戻し土にガラが混ざっていると、時間の経過とともにガラの間に土が流れ込み、沈下がおきるのです。
束石を土の上に置くだけで、束石周辺の転圧や固定が不十分な場合には、束石が埋め戻し土の沈下と共に沈み込み、床束の浮きの原因になります。

床束の浮きのほとんどは、施工不良が原因!

いずれにしても施工不良といえるもので、床束が浮いていると歩くと浮き沈みする床になり、床の沈み、きしみ、床鳴りの原因になります。
また、放置し続ければ床全体に歪みがでます。

他にも大引きの反りや歪み、圧密による自然な沈下などが原因で床束に浮きが見られることがありますが、極端に床束が浮いている場合は、ほとんどのケースが施工不良が原因で発生します。

部分的な床束の浮きだけなら大きな問題とはいえませんが、基礎のクラックや建物に傾きなどが見られる場合には、建物に重大な瑕疵がある可能性が高くなるので、他の不具合の有無もしっかりと確認した上で、総合的に判断する必要があります。

この不具合は「単なる施工不良」なのか「経年劣化」なのか「建物に重大な瑕疵がある可能性が高い」のか?
ホームインスペクションは建物に生じている不具合事象の事実のみを報告するのが仕事とはいえ、買主様からは見解を求められる事が多いので、慎重に判断しなければなりません。
インスペクターの見解が建物の購入判断に影響するので責任は重大で、仕事のやりがいにもなります。

さて、明日は事業用物件のインスペクションを行う予定です。

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床束の下に入れた飼い木が外れてしまい、完全に床束が浮いている状態

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