7階建で建築確認申請を行い、9階建で建築された賃貸マンションが問題になっています。
4年前に完成し、現在25世帯が入居しているとの事で、市がマンションの所有者に対して是正命令を出しても所有者が応じないそうです。
建築計画を提出した建築主は前の所有者の様なので、事態は複雑です。
この様な事は、私がこの業界に入った頃は日常茶飯事でしたが、現在でも行われているとすると、業界のモラルが疑われてしまいます。施工した建築業者への罰則規定を厳しくしないと、この様な事はなかなかなくなりません。
さて、住宅のインスペクション(建物診断・建物調査)が少しずつ普及してきました。
今年の5月には住宅関連の法律も改正され、中古住宅の取引を活発にするための具体的な施策も本格的に検討される様になってきました。今回の宅建業法改正も中古住宅の売買時に、一次的なインスペクションを行う事を促進するためのもの。中古住宅の「質」が❛見える化❜してある事は、安心して取引を行うためには不可欠です。
残念ながら中古住宅取引時のホームインスペクションの義務化はされませんでしたが、不動産仲介大手の東急リバブルは、2017年にも自社で扱う全ての中古住宅で、物件を売買するときに不具合がないかどうかを無料で診断するサービスを開始するといいます。
同じく「三井のリハウス」を展開する三井不動産でも、消費者の安心感を高めるため、古くから中古住宅のホームインスペクションに注目していて、建物・設備の調査と補修サービスを仲介標準業務としています。
2017年には、三井不動産、東急リバブルに続いて、大手不動産仲介会社だけでなく、中小の業者でも中古住宅の無料診断サービスが増えるかもしれません。
誰に調査を依頼するかが重要!
しかし住宅診断を行っても、「雨漏りしています」「基礎に〇〇mmのクラックがあります」「建物に〇〇mmの傾きがあります」などと発生している事象を報告するだけでは、消費者にとって価値のある住宅診断とはいえません。
築年数の経過した中古住宅では、劣化事象や多少の不具合があるのは当たり前。
発生している事象を元に原因を推測し、解決へのアドバイスをする事が重要になります。
そして、発生している不具合や劣化事象の見落としや隠ぺいなどは決してあってはいけません。
事実を事実として正確に伝える事が大切です。
消費者が本当に求めているのは、「この物件は自分にとって購入に値する物件なのか?」「購入して長く快適に住み続けるためには、何が必要なのか?」といった事なのです。
ただ単に調査・診断するだけなら建築の専門家なら誰でもできますが、これだけでは片手落ちです。
建物の修繕やリフォームの経験豊富なホームインスペクターに依頼した方が、より役立つ情報や提案が得られると思います。
また不動産仲介業者にとっても、買主の中古住宅に対する不安を取り除き、安心して物件を購入してもらうためには、専門家による住宅診断は欠かせないはずです。不動産仲介会社が積極的にホームインスペクションを利用する様になるのが望ましいと思うのですが、残念ながら今のところ不動産仲介会社からのホームインスペクションの依頼はほとんどありません。大手不動産仲介会社の無料診断サービスが火付け役となって、ホームインスペクションが普及する事に期待したいと思います。