ロンドンで家を買う物語  その1

本日は文庫本のご案内です。
ご紹介するのは、ちくま文庫「突撃!ロンドンに家を買う」 井形慶子著 です。

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豊かな緑と美しい家々が織りなす住環境、古い住宅ほど価値があるといわれているロンドンで、家探しに奔走する著者の奮闘記です。
尚、この本が書かれたのは、ロンドンオリンピックの少し前の事です。

28歳で出版社を興し、イギリスの生活情報などをテーマに出版している女性が、40代を経て、生活の拠点をロンドンに置こうと考えます。
イギリスの中古住宅事情や、安心して物件購入ができる仕組みなど、ロンドンで家を探したい人でなくても、イギリスの住文化を知る上での参考になります。

イギリスの中古住宅流通シェア(既存住宅流通戸数/全体の住宅供給量)は85.8%(2009年)で、市場に流通する住宅の85%以上が中古住宅です。
※ちなみに、アメリカ 90.3%に対して日本はわずか14.7%です。先進国の中で、日本ほど中古住宅流通のシェアが低い国は他にありません。

イギリスで家を探すとなれば、ほとんどが中古住宅を探す事になります。
私がイギリスの住宅事情について事前に知っていたのは、この程度の事だけでした。そしてロンドンで中古住宅を探すのは、そんなに難しい事ではないのではないかと思って、この本を読み始めました。

イギリスでの良い家の基準

イギリスの歴史は移民の歴史です。人種をはじめとした、日本では考えた事もないような階級という概念もあって、かつてはイギリス人が占有していた普通の住宅地も、様々な外国人が移り住んで生活を始める事で、住環境は少しずつ変貌していってしまうといいます。
生活習慣、モラルの違い、教育の有無はそのまま暮らしぶりに反映されます。
ロンドンでは通り一本隔てただけで、家並みがガラリと様変わりしてしまうのは、そのためだそうです。
同じ日本人だけに囲まれて暮らしてきた日本人にとって、人種や階級問題まで考えて物件選びをしなければならないのは、非常に難しい事の様に思われます。

また、イギリス人は不動産はロケーションだといいます。中がどんなに汚くても、場所さえ間違わなければ、価格は必ず上がっていくそうで、グレードの高い重厚な屋敷群のエリアは、絶対に価格が下がる事はないそうです。

実は日本と違い、イギリスの住宅不足は深刻で、差し迫った社会問題にもなっています。中でも様々な規制から、住宅地を開発できないロンドンは、完全な売り手市場で、いい物件は、わずか一晩で売れてしまうといいます。

面白いのは、イギリスでは不動産業を立ち上げるのに特別な資格はいらないという事です。物件調査には家屋調査士が入り、契約や代金の受け渡しは、全て売主、買主の弁護士がやりとりするそうです。このように法・権利・金銭に関わる部分は全て専門家が担当する取引というのは、日本人にはあまり馴染みがありません。

そして、学校、教会、病院、警察署だった建物も、全て中を区切って、設備を整え、最後は住宅として売買されるそうです。
1800年代に建てられた上流階級の人々に仕える使用人と馬のための長屋式住居は、今は都心部の代表的な高級住宅で、現在も3億円以上の高値を更新中とか・・・。とにかく古いからといって価値が落ちる事はありません。値段が下がるのは他に原因があるのだそうです。

この本を読むと、ロンドンでの物件探しが一筋縄ではいかないのは、やはり住宅の背後にある社会構造、すなわち階級社会というシステムと住まいが密接に結びついているせいである事がよく解ります。
単に立地が良い、建物が立派、綺麗にリフォームされているというだけでは資産価値は決まりません。近隣にどんな人がいるか、治安は良いかなどが最も重要なチェックポイントとなるのです。
しかし、建物そのものは骨董品のように古くても、設備は現代的なのが良い物件の基準となるのは日本と同じ。
セントラルヒーティング(暖房設備)、ボイラー(豊富な湯量)、二重窓ガラス(高気密・防犯)は欠かせないといいます。
イギリス人にとっての住宅売買は「投資効率」という不動の価値に根付いているのです。
イギリス人は一生のうち平均7回も家を買い替えるといいます。
売却する時に、大きく値下がりしない事は大切な条件なのです。
・・・・・続く

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