住まいのワンストップサービスの中のインスペクション

住まいのワンストップサービスとは、住宅を購入しようとする際に必要な様々な手続きを、なるべくひとつのところで済ませてしまおうというものです。
物件探しからリフォーム、住宅ローン手続きなどを一か所で済ますことができれば、とてもラクです。

物件を購入していざリフォームしようとした時になって、「そのリフォームはできない」などということもなくなります。
従来の不動産会社には、購入後のリフォーム費用を試算し、総予算を把握して適切な住宅ローンの申し込みができる人はほとんどいませんでした。
購入後にリフォームプランを作成すると、予算が足りないなどということは日常茶飯事です。

また、建物の構造やマンションの管理規約などの制限で、希望通りのリフォームができないケースも少なくありません。
こうした制限を的確にアドバイスできる人も、不動産会社にはいません。

「物件+リノベーション」の総予算から検討して、最適な物件を提案してもらうことができるのがワンストップサービスの最大のメリットです。

ワンストップ会社は、物件契約前に要望通りの工事が可能かどうかをチェックし、構造や管理規約はもちろん、必要に応じて配管や雨漏り等のチェックや耐震診断などのインスペクションもまとめて提供するとしています。
国交省でもこうした「ワンストップモデル」を推進しようとしています。

ワンストップ事業者が行う建物調査はインスペクションではない!

こうした施策が中古住宅流通市場の活性化に役立つことは理解できるのですが、同時に国が奨める「インスペクターの第三者性」が確保できないといった矛盾があります。

ワンストップサービスの流れの中のインスペクションの場合には、その目的が不動産の売買契約やリフォーム工事の請負契約をとることになりかねません。
リフォーム工事を行う前に、リフォーム会社が建物を調査して工事が可能かどうかを調査するのは当たり前のことで、従来から行われてきたことです。
しかしこれは、インスペクションではありません。
私も長年住宅リフォームに携わってきたのでリフォーム前の現地調査は3,000件以上行っていますが、リフォームのための建物調査とホームインスペクションでは、同じように建物を見ていても明らかに視点が異なります。
リフォームのための現地調査とインスペクションがごちゃ混ぜになると、消費者を混乱させるだけです。
ワンストップ事業者が行う建物調査には「客観性がない」ことを明確にするべきだと思います。

インスペクションの本来の目的は、売買やリフォームの契約をとるためではなかったはずです。
そこを明確に線引きしないと、ホームインスペクションが我が国で定着するのは難しいと思います。

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六本木ヒルズ・森美術館  建築の日本展

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