「安心R住宅」は本当に安心なのか?

皆様は「安心R住宅制度」というのをご存知でしょうか?

この制度は、国が定める一定の条件を満たした中古住宅の広告物などに、所定のロゴマークを付けて販売できる仕組みのことです。

カンタンにいえば、従来の「不安」「汚い」「わからない」といった中古住宅のマイナスイメージを払拭するために、一定の条件を満たせば国の“お墨付き”を与えますということです。

まだまだ数は少ないものの、「安心R住宅」のロゴマークが付いた物件が少しずつ市場に出まわるようになってきました。

おもな要件は、「新耐震基準等に適合し、既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に適合」「リフォームを実施するか、リフォームの提案書を付ける」「建築時の適法性や認定、維持保全、保険・保証、省エネ性能などの情報の開示」などです。

国土交通省のホームページをみると
➀基礎的な品質があり「安心」
➁リフォーム工事が実施されていて「きれい」
➂情報が開示されていて「わかりやすい」
といった狙いがある様です。

また適合すれば既存住宅売買瑕疵保険への加入や、築20年以上の住宅であっても住宅ローン控除が適用になります。

確かに購入者にとってメリットがある制度ではあるのですが、「安心R住宅」はこれだけで本当に安心できる住宅といえるのでしょうか。
住宅について少し勉強したことのある購入者なら、誰でも不安に思う事でしょう。

「安心R住宅」が安心でない理由

私が住宅リフォームに20年以上関わってきた経験からいうと、「安心R住宅」だからといって手放しでオススメできるものとはいえません。

「安心R住宅」が安心といえない理由はたくさんあります。
・安心R住宅の新耐震基準とは、昭和56年6月以降に建築されたものをいいますが、耐震基準はその後も改正さ
 れていて、過去の大地震発生時には新耐震基準で建築された木造住宅が数多く倒壊しています。
 木造住宅については、平成12年(2000年)の改正に適合していなければ安全とはいえないというのが近年の業
 界の常識になっています。
・既存住宅売買瑕疵保険の適用範囲はごく限定的なもので、かつ保険期間も短いため、瑕疵保険の検査に適合
 しているだけでは安心とはいえません。
 たとえば、設備に不具合があったり、配管から漏水していても保険対象外になる可能性が高いです。
・リフォームは必ずしも行う必要がなく、行ったとしても特に決められた品質検査があるわけではありませ 
 ん。
 リフォーム工事に欠陥や不具合があってもノーチェックの可能性があります。
・情報の開示については、「有」「無」「不明」を開示するだけでよく、内容の精査を要する訳ではありませ
 ん。
 たとえば維持管理計画の有無は問われますが、その内容については問われません。
 また、すべての情報が「無」または「不明」であったとしても情報を開示したことになり、安心R住宅の要
 件を満たします。

このようなことから「安心」という名の国の“お墨付き”を与えるには、要件が緩すぎる様に思います。
どちらかといえば住宅購入者のメリットよりも、中古住宅の流通を促進しやすくするための不動産業者のための仕組みなのではないでしょうか。

実際にインターネットでの評判を見ると、これらの住宅を扱っている住宅再販業者の評判はあまり良いとはいえません。
「見えないところはできるだけ安く仕上げて高く売る」のが住宅再販ビジネスです。
「安心R住宅」に関しても、適合要件に関係のない部分は修繕が行われていない可能性があります。
この様な再販業者の思惑を排除しようとするための仕組みのひとつが「安心R住宅」ですが、不動産仲介業者主導では上手くいくはずがありません。

不動産業者から「この物件は安心R住宅なので安心です」と言われたとしても、「他の物件よりも多少安心かな?・・・」程度に思った方が良いでしょう。
購入者が中古物件を選ぶ目安にはなると思いますが、これだけで「安心R住宅」を選べば絶対に安心という誤解をしない様に十分注意してほしいと思います。

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安心R住宅の標章
「安心R住宅」の安心を過信しない様に注意が必要です

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