環境省は、住宅やビルを解体・改修する際、アスベストの有無を事前に調査し、都道府県に報告することを工事の実施者側に義務付ける方針を固め、2021年春からの施行を目指すそうです。
これまでも、建物の解体・改修工事の際には事前調査を行い、アスベストが見つかった場合には届け出を行うことになっていましたが、住宅などの小規模な工事では調査が行われないケースが数多くありました。
住宅では、屋根材や外壁材、内装材などにアスベストが含まれているケースがあり、中小の建設業者やリフォーム業者にとっては、調査の手間や金銭的な負担が増えます。
調査を行わない場合の施工業者への罰則などが厳格化されれば、負担は建築主側にも及ぶことになりそうです。
さて、レオパレス21のアパートで屋根裏の界壁がないなどの施工不良が見つかったのに続き、今年に入ってからはダイワハウスの住宅やアパートでの施工不良問題が発覚しました。
ダイワハウスの問題はレオパレスほど大きく報道されていませんが、決して軽視できるものではありません。
ダイワハウスで問題となっているのは、防火基準を満たしていないアパートの共用廊下の柱と住宅などの独立基礎の不具合です。
独立基礎の問題については型式適合認定違反のため、社外の人が見ても欠陥に気付きません。
これらの問題は組織ぐるみともいわれていますが、建築現場での人手不足、特に現場監督不足が無関係ではない様に思われます。
現場監督とは建築現場において、工程管理・品質管理・安全管理・原価管理を行う技術者のことですが、圧倒的に数が不足しているのが現状です。
現場監督は以前から不人気の職種で、大学の建築学科の中でも現場監督志望の学生は稀有な存在でした。
近年では女性の現場監督も珍しくなくなりましたが、人手不足の傾向は依然として強く、現場監督の求人倍率は4~5倍ともいわれていて、一人の求職者に対して4~5件の求人があるのがあたり前の様になっています。
したがって住宅現場では、一人の現場監督が抱える現場の数が10棟を大きく超えることも珍しくありません。
私も過去に15年間ほど一戸建て住宅や鉄骨・RC造マンションの現場監督をしていましたが、管理が十分に行き届くのは注文住宅で5~6棟、建売住宅でも7~8棟程度でした。
ハウスメーカーのアパートは規格品なので、もう少し管理できる棟数が増えたとしても、管理棟数が10棟をはるかに超えるとなると工程を管理するだけで精一杯で、品質管理まではとても行き届かないでしょう。
現場間が離れていて移動時間がかかれば尚更で、週に1回しか現場に行けないなどという事にもなりかねません。
したがって、工事に見落としがあっても当然と言えば当然の結果なのです。
本来であれば、工事監理者である設計者が現場を確認しなければいけませんが、設計施工で請け負っているハウスメーカーの場合は工事監理者が現場に出向くことはほとんどありません。
工事監理者が行うのは書類上の確認のみで、現場での確認は現場監督にすべて委ねられているのが現状です。
そのため住宅会社では営業マンや設計担当者から現場監督への配置転換などを行っているケースもありますが、現場監督は誰でもすぐに勤まるほど甘い仕事ではありません。
一人前の現場監督になるまでには、優秀な設計担当者であっても最低でも1年以上はかかるでしょう。
業務の大変さに耐えかねて、退職してしまうケースも少なくありません。
住宅会社を決定する前に現場監督の仕掛棟数の確認を!
すなわち住宅会社の品質検査はあまり期待できないので、建物の品質は施工する大工や職人の腕やモラル次第ということになってしまいます。
一方では、肝心な大工や職人も高齢化に伴い、熟練工が不足しているという実情があります。
こうした傾向は全ての住宅会社に共通するものなので、レオパレスやダイワハウスの欠陥住宅問題は氷山の一角と考えた方が良いと思います。
これから住宅の建築を予定している方は、住宅会社を決定する前に必ず現場監督の仕掛棟数を確認しておくことをオススメします。
「きつい」「汚い」「危険」の3Kが浸透している現場監督は、常に人手不足に悩まされています!