弊社に依頼のある建物の不具合調査の中で、最も多いものに雨漏り調査とカビの原因調査があります。
以前から多かった雨漏り調査と異なり、カビの原因調査は住宅の高気密・高断熱化が進む中で近年急増しているものです。
雨漏りの原因調査は、非常に難しく根気が必要なことはすでに何度もお伝えしました。
雨水の侵入口が1箇所とは限らないため、できるだけ費用をかけずにピンポイントで修理しようとすると雨漏りを完全に止めるまで時間がかかります。
雨漏り調査は何度も修理を繰り返すわけにもいかないので、精神的にもきつい仕事です。
屋根や外壁を剥がして調査すれば手っ取り早いのですが、建築主が望まないことが多く、あくまでも最終手段になります。
そして外壁の複数の箇所から雨漏りしている場合には、防水紙がボロボロになっているケースもあります。
そんな場合には外壁を全面的に張り替える必要があり建築主には大きな金銭的負担を強いるので、万一見込み違いでもあれば、調査を行った者として重大な責任を負うことにもなりかねません。
たとえ時間をかけてでも入念に事前調査を行う必要があります。
そしてそれ以上に厄介なのがカビの調査です。
カビは雨漏りや結露、漏水が原因で発生することが多いので、カビの原因を探っていくと雨漏りが発覚するケースもあります。
カビは重大な健康被害をもたらすことが多く、建物の耐久性にも影響するので、深刻な問題です。
カビの原因は雨漏りや結露以外にも、雨に濡れた木材や床合板の乾燥が不十分なまま仕上げ工事を行った、工事中基礎の内側に溜まった雨水をしばらく放置していたなど、現場管理の不備があります。
雨漏り・カビの発生原因には施工者側のスキル不足も・・・
一方カビの原因のひとつである結露は、近年の高気密・高断熱住宅ではほんのわずかな施工ミスから生じることもあり、結露対策には施工者の適切な品質管理が不可欠です。
また住宅性能の向上が著しい近年では、新たな工法や納まり・建材などが普及するに従い、従来では起こらなかった結露被害の事例もたびたび目にします。
結露を無くすために施工者は、換気量の不足や屋根断熱の通気不良、断熱材の隙間、気流止めの施工忘れなどの施工ミスに十分注意すると共に、常に最新の情報を入手し、様々な状況に対応していく必要があります。
雨漏り・カビのトラブルを防止するためには、施工者側でそれらが発生するメカニズムを良く知っておかなければいけません。
まずは設計者・施工者などの作り手側が学習することが必要だと思います。
近年はインターネットが普及した事もあって、意識の高い建築主は自ら情報を収集し、中途半端な建築技術者よりも品質に対して厳しい目を持っています。
たとえ問題がない場合でも、作り手側が根拠のある説明を行えないと建て主の不信感を払拭することはできません。
住宅建築・リフォームに携わる者は、このことを肝に銘じておく必要があると思います。
2階からの漏水が原因と思われる天井裏に発生したカビ
1階の天井裏を覗くと強いカビ臭が発生していた
漏水を修理した際に、濡れた床合板をそのまま放置したことによってカビが発生したと思われる
天井裏にあるエアコン配管の結露が原因で発生したと思われる天井石膏ボードのカビ
上部にエアコンの配管が通っていたため、配管の結露が疑われる
石膏ボードは一度濡れるとカビが発生する可能性が極めて高い
小屋裏の結露が原因と思われる屋根の野地板に発生したカビ