先日たまたま近くに用事があったので、私が9 月まで勤務していた会社で現場管理を行ったマンション2 物件に久しぶりに立ち寄ってきました。いずれも25 年以上前に竣工した物件ですが、私がマンションの現場責任者になった初期の頃の現場のため、思い出深い建物です。
折しも横浜市の傾斜マンションの問題が発生しているだけに「我が子」の無事な姿を見たいと思っていたので、丁度良い機会になりました。
欠陥マンションは起きても不思議ではないこと
あいにくオートロックが作動していて建物内に立ち入る事はできませんでしたが、外から眺める範囲では修繕やメンテナンスもしっかりと行われている様子で、特に気になる点は見当たらず安心しました。
もし自分が現場管理を行った建物を自らの手でインスペクションする機会があったら、どんな評価をするのかと思わず考えてしまいました。
現在では25 年前と比較したら施工技術や工法も大きく進歩していると思うのですが、建築現場では各工種の職人の経験や技術に頼る部分が多いのは今も昔も変わらないはずです。
また、建築現場では工場内でものを作るのと違い、作業環境も決して良い時ばかりではありません。時には雨や雪、強風、炎天下の中での作業が強いられます。現場内での事故や災害の危険度も工場内とは比較にはならないでしょう。想定外のトラブルが発生する事もあります。
作業員のみでなく、現場管理者も激務でした。日中は各職方との打ち合わせや設計事務所との打ち合わせ、近隣住民との調整、関係各省庁への届け出、現場内の安全確認や作業の進捗状況の確認、墨出し作業、そして品質チェックと是正指示に追われ、現場作業が終了すると夜は作業員の手配やコンクリート等材料の手配、書類作成、施工図作成等の業務が夜遅くまで続きます。
当然工期や利益確保のプレッシャーもありました。休日返上は当たり前の様な毎日でした。当時の私は一現場が終わるとしばらくの間、身も心もボロボロでした。決して大げさな事ではありません。
だからといって今回の横浜のマンションの様な事は決してあってはならない事なのですが、問題の原因を現場責任者だけに押し付けるかの様な初期の報道には、私は疑問を感じていました。「決してあってはならない事」であっても、「あっても不思議ではない」と思っていたからです。欠陥住宅は「現場担当者と現場の職人の組み合わせで生まれる。だから大手だから安心という事は決してない」という言葉をどこかで聞いた事があるのですが、私も同じ様に思います。
しかし、工事を請け負うのは元請の会社です。施主様は元請会社を信用して工事を発注するのであって、現場責任者を信用して工事を発注するわけではありません。
今回の横浜のケースでは、販売元の会社や元請のゼネコンを信用してマンションを購入したと思います。
品質の管理責任を現場責任者のみに負わせるのではなく、組織的にチェックする仕組みをつくらないと根本的な解決にはならないのではないでしょうか。これはマンションでも一戸建ての住宅でも全く同じです。