住宅を新築したりリフォームする際に業者を選定するにあたって、多くの人が複数の業者から見積もりを取ると思います。
業者選びで失敗しないためには、複数の業者の意見を聞き、プランや提案内容、営業マンの人柄などを比較検討する事は決して悪い事ではありません。実際多くの住宅雑誌や住宅購入の手引書などでも相見積もりを取得する事を推奨しています。
しかし、5社や6社も相見積もりを取る事は私はお奨めできません。
そんなに何社からも見積もりを取ったら、各社と打ち合わせするだけでも大変ですし、お断りする時も大変になります。
(たまに相見積もりだけ取って、後は連絡さえしないという方を見かけますが、断る時はきちんと相手に伝えるのがマナーだと思います)
見積書を作成する事は、業者にとってはとても手間がかかる事です。
しかし、業者にとって好ましい事ではなくても、業者は皆、ある程度ならやむを得ないと思っています。
たとえ手間がかかるにしても、見積提出件数と売り上げは比例する傾向にあるので、どの業者も仕事と割り切って見積書を作成すると思います。でも、受注できなかったものは骨折り損のくたびれ儲けでしかありません。
従来より、住宅産業は非常にサービス残業の多いブラックな業界と言われてきましたが、その一因がこの様な見積書を作成する手間ばかり増えてしまって、儲けにならないという事にあるのは間違いありません。
完成した商品を販売するのと違い、住宅の見積もりには非常に多くの手間と時間がかかります。消費者にとって親切な見積書(別途工事や後になって追加工事ができるだけ発生しない様に配慮した見積書)を作成しようとすればするほど、調査やプランニングに時間がかかってしまいます。
そして受注できなかった分の手間は、最終的にはその会社で契約した別の人のコストに反映されてしまうのです。
相見積もりでの極端な値引き交渉は禁物!
消費者が相見積もりを取る目的は良い業者を探す事の他に、複数の業者にネゴする事によって、より交渉を有利に進め、大きな値引きを引き出そうとしての行為でもあると思います。
しかしプランや工事の品質よりも、価格の安さが決め手となってしまい、見積もり作成で余計な手間と経費がかかって、更に赤字に近い値引きをしないと勝てないとなれば、まともな業者なら商談に参加しなくなってしまいます。
実際に私が勤務していた会社でも、4社や5社から見積もりを取って価格重視のお客様の場合には、商談には一応参加するものの、なるべく手間をかけない様にしていました。
また、競合先が7社も8社もいる場合には、商談に参加しませんでした。
お客様が業者を評価するのと同様に、実は業者もお客様を選んでいるのです。
評判が高く人気のある業者であれば、赤字に近い金額で無理して工事を請ける事などほとんどありません。
そこまで無理をしなくても、選んでもらえるお客様は他にもたくさんいるためです。
国内最大級の不動産・住宅情報サイトであるHOME’Sでは、「匿名相談だから断るのもカンタン」という点をアピールして、最大8社までリフォーム会社を紹介するといっていますが、それで本当に優良会社が登録しているのか疑問を感じてしまいます。
「当サイトでは最大で8社までリフォーム会社を紹介しています。お客様は匿名での見積もり依頼なので、いつでも好きな時に断る事ができます。そんなお客様で良ければ紹介しますが、相見積もりに参加しますか?」と言われて優良な業者が多数参加する様にはとても思えません。
相見積もりを取得するのは、消費者の立場からは当然の行為ですが、くれぐれも度が過ぎない様にしたいものです。
高品質な工事が期待できる優秀な業者が目の前から去って行ってしまう様な事にでもなったら、元も子もありません。