耐震補強工事の注意点

今年も残すところあと10日になりました。毎年、クリスマスが終われば町はたちまち新年を迎える準備に早変わりです。
昨日で年賀状を書き終え、無事ポストに投函しました。私も少しずつ新年を迎える準備を進めていますが、まだ年内にホームインスペクションの予定があるので、仕事納めまで気を引き締めていきたいと思います。

さて、私が住宅会社でリフォーム事業を行っていた頃、一戸建て住宅の耐震リフォームは決して人気の高いメニューとはいえませんでした。
間取り変更や住宅設備機器の変更で住みにくさ・使いにくさが解消し、断熱改修で快適性が向上するのに対して、耐震補強の効果は大地震が発生しないとわかりません。いつ発生するかわからない(発生しないかもしれない)地震予防のために費用をかけるのであれば、他にかけて快適に住めるようにしたいと思うのは理解できます。
そんな中で耐震リフォームの相談に来る方は、耐震に対して関心の高い方が多く、自分でもいろいろと勉強されている方が多かった様に思います。

しかし、耐震性能に不安のある家は、築年数も古いものが多いので、建物の図面がない事も少なくなく、その場合は最初に現地を確認して間取りを写すところからスタートするしかありません。
また耐震診断を行うには、柱や筋違いの位置、下地材及び仕上げ材の種類・厚さ、接合部の緊結状態、建物の劣化具合などを把握する事が必要になるため、小屋裏や床下などからもできる限り詳しく調査します。(これらが不明のままでも耐震診断は行えますが、正確な診断結果を得るためにはできるだけ詳しい情報が必要です。)これらの調査結果をもとにパソコンの耐震診断ソフトを使用して耐震診断を行った上で、耐震補強計画を立てます。しかし、目視調査で全てがわかる訳ではないので、調査を行った人の経験や推測をもとに判断しなければならない事も生じます。

耐震補強工事の特徴

その結果、耐震診断や耐震補強計画は、人によって異なる結果になる事が多く、10人いれば10通りの結果になる事も珍しくないでしょう。
耐震補強には、基礎の補強、耐力壁の設置、柱頭・柱脚の補強、接合部の補強、床面の補強、屋根材の見直し、傷んだ部材の補修及び交換など、様々な方法があり、予算や工事範囲、工期、耐震補強と併せて行うリフォームの内容や工事のし易さなどを考慮しながら、どの方法が良いかを選択して補強計画を立てます。計画を立てる人が何を優先するのかによって、計画に違いが出てしまうのです。調査を行った人、診断を行った人、補強計画を立てる人の経験やスキル、センスや考え方によって優劣が変わってしまうので、注意しなければいけません。
もちろん詳細図面がなければ、補強計画の元になる最初の調査の時点で、すでに異なる結果になっているはずです。

また、苦労して立てた耐震補強計画でも、現場で全て計画通りに実施できるとは限りません。新設予定の位置に筋違いが入らない、あるはずだった柱がなかった、筋違いを設置する予定の位置に基礎がないなど、解体して初めてわかる事もあります。現場では臨機応変な対応が求められ、その都度耐震診断ソフトのデータを入れ替えて、最新の補強計画に修正しながら工事を進めなければなりません。

この様に耐震補強工事では、現場と常に連携を取りながら、不測の事態にも柔軟に対応していく事が求められます。
耐震補強計画を建築設計事務所(建築士)に依頼し、施工を施工会社に依頼する場合は、不測の事態が生じた時の対応に不安があります。
耐震補強工事を行う際には、個人的には、耐震補強工事に手慣れたリフォーム会社や住宅会社に設計施工を一括で発注する方が良いと思います。
手慣れていない業者だと、不測の事態が発生する度に工事が止まり、工期やコストに大きな影響を及ぼす恐れがあります。

また、耐震補強工事を実施する際には上記の特徴を理解して、あらかじめある程度の計画変更は覚悟しておく必要があります。そしてなるべく予算や工期にも多少の余裕を持って進める様にしましょう。

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