古民家リフォームの注意点

2020年以降に予定されていた小規模住宅・建築物の省エネ基準の適合義務化が実質見送られることになって、住宅業界内に波紋が広がっている様です。

2020年の義務化を想定して家づくりに取り組んできた業者の中には、今回の国の判断を批判する声が多く、反面、義務化のハードルが高いと考えてきた業者はおおむね歓迎している様です。
しかし義務化するしないに関わらず、高度なレベルの家造りを目指す業者は、黙っていても省エネ性能の高い家を建てるので、工務店、住宅会社の淘汰は一層進むようになると思います。
問題は、省エネ基準の説明方法になるでしょう。
性能によって快適度が違う事が広く一般に理解される様になれば、おのずと省エネ性能が高い家が求められるようになると思われるからです。

さて、昭和25年に建築基準法が制定されてから、在来工法が我が国の木造住宅のスタンダードになりました。
一方、建築基準法制定以前に建築された伝統構法の住宅は古民家と呼ばれ、今や貴重な存在になりつつあります。

伝統構法の構造的な特徴として、玉石基礎による礎石基礎であり、筋交い、火打ちをほとんど使用せずに、足固め、敷き土台、差し鴨居、梁などの横架材により剛性を確保し、大黒柱が存在していることなどがあります。

伝統構法では、地震の際に木部の仕口の「めりこみ」によるピン接合と、本来木材がもつ粘りの特性を活かして、外力からの変形に対して構造自体が復元力を発揮して抵抗するという「総持ち」という考え方が用いられています。
在来工法が外力による変形をできるだけ抑える構造なのに対して、根本的に正反対の考え方です。

総務省が実施している平成25年度の「住宅・土地統計調査」によると、昭和25年以前に建築された伝統構法と考えられる住宅は、全国に121万5,000棟余り残っていて、千葉県内でも時々見かけることがあります。

しかし伝統構法住宅は平成20年の調査時よりも約27万8,000棟減少していて、今後減少傾向にますます拍車がかかりそうです。
伝統構法住宅に関しては、地震に対する安全を保証するための耐震診断法や耐震改修方法が確立されていないのが大きな原因と思われます。

古民家リフォームには、伝統構法に対する理解と大工の木材加工技術が不可欠

一方、昨今では数年前からの古民家ブームによって、古民家再生事業に参入する業者が増えています。
しかし中には、伝統構法の特性を無視した「なんちゃってリフォーム」も少なくありません。
弊社が建物調査の依頼を受けた物件の中でも、残念な古民家リフォーム事例に時々出会います。
古民家再生には、伝統構法の理解と木に対する熟練の技術が不可欠です。
単なる見てくれだけの化粧直しだけでは、たとえ1,000万円以上の費用をかけても、貴重な古民家をこの先長く保存することなどできません。

伝統構法の理解と大工の木材加工技術がない事業者は、流行に乗って安易に古民家再生リフォームに手を出すべきではないのです。
古民家リフォームをお考えの方は、業者選定の際には十分に注意して欲しいと思います。
地域の古民家再生協会などに問い合わせしてみると良いでしょう。

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