小説「狭小邸宅」

昨日の台風は凄かったですね。私の事務所がある7階建てのビルが、強風で揺れている様でした。
あれだけの強風と降雨だと、雨漏り被害を受けた建物も多かったのではないでしょうか。
ここ数日間、雨漏りの対応で走り回る住宅会社も多いと思います。
そしてリオ五輪も終了して、ようやく寝不足からも解放され、本気モードになれそうです。

さて、書店には不動産業界や建設業界の裏話や内部事情を暴露した本が数多く並んでいます。
特に不動産業界は、一昔前からブラックな業界と思われて来ました。
不動産に関する知識や経験がほとんど無くても、セールストークさえできれば中途採用でも受け入れてもらえて、トップセールスマンになれる業界だからでしょうか。何よりも「儲かる」商売というイメージがあります。
その中で、私が注目したのは第36回すばる文学賞受賞作「狭小邸宅」という小説。(新庄 耕著、集英社文庫刊  
定価400円+税)
たまたま書店で見つけて購入し、一気に読み終えてしまいました。
文学というよりも、不動産関係のルポタージュ風小説といった感じ。
暴言と厳しいノルマが日常の不動産業界で働くひとりの新人営業マンが、葛藤する姿を描いた小説です。

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話の前半は、いわゆるブラック企業と呼ばれる不動産会社の内情を描いた小説という印象でしたが、やがて「仕事とは何か、働く意味とは何か」という事を読者に問いかける内容に変わっていきます。
そしてどんなに理不尽な事にも耐えながら、自分の生活を犠牲にして、身体を壊すほど頑張って働いても、ほとんどの人が都心ではペンシルハウスと呼ばれる狭小住宅にしか住めない事を思い知らされます。
小説としての評価は人それぞれなので省略しますが、これから不動産購入を検討している方は、短い小説で一気に読めるので、一度読んでおいても損はしないと思います。

不動産営業マンの決して誠実とはいえない「まわし」や「かまし」の販売テクニック(?)を、日々のきついノルマや上司からのプレッシャーを受けて、嫌でも使わざるを得なくなる事情など、不動産営業マンの心理を理解する上でとても参考になります。

小説が教えてくれるもの

「お前らは営業なんだ、売る以外に存在する意味なんかねぇんだっ。売れ、売って数字で自己表現しろっ。(中略)
こんなわけのわからねぇ世の中でこんなにわかりやすいやり方で認められるなんて幸せじゃねぇかよ」と定例の総会では、社長自らが各店舗の営業マンに罵声を浴びせ続けます。
この不動産会社は、決して社員が2、3名の町の小さな不動産屋ではありません。最も多くありがちな中堅の不動産会社の様です。
実際にこの様な罵声を、大勢の営業マンの前で直接浴びせる社長は滅多にいないと思いますが、経営者としての本音である事は間違いないでしょう。

しかし、営業マンにきついノルマがあるのは、不動産業界だけに限った事ではないでしょう。
例えノルマがなくても、営業マンは、常に売り上げに対する厳しいプレッシャーを抱えています。
売り上げがないと、歩合給に影響するだけでなく、会社にもいずらくなってしまいます。1件の単価が高額になる不動産のセールスでは、何か月も売り上げゼロの営業マンも多いのです。

これから住宅を購入しようとする方は、この様な心理的状況にある営業マンを相手にしていく事になります。
少し大げさに言えば、不動産営業マンにとって1軒の「家を売る」という事は、自分の生活を賭けた真剣勝負である可能性もあるのです。
私自身も住宅リフォームの営業責任者時代には、お客様から契約してもらうために、メンバーと共に手練手管の限りを尽くしました。購入してもらうために「努力」をするのは、営業マンならどんな業界でも同じです。
しかし、この「努力」の中に、不動産業界独自のアンフェアといえる方法があるのなら、それを知っておいて損する事はありません。
この小説は、不動産を買う立場としても、最低限の武器(知識)を持って、商談に臨むべき事を実感させてくれます。

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